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書評 おいしくて泣くとき 森沢 明夫   子供食堂は「偽善」なのか?。利用者の子供は「貧乏人」なのか?。そういう言って批判する人の「心」が貧しいのだ。

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本書は、子供食堂の話しである。
子供食堂をやっている親子。その息子と、利用者の貧しい少女の物語を軸にした話しと
子供食堂をしている喫茶店が事故にあう、店がつぶれて・・・、という二つの話しだった。
この話しが最後には合流して感動に繋がる。
思いっきりベタな終わり方です。
「演歌か!」と突っ込みを入れたくなった。
でも、悪くない。

この食堂で、子供飯を食べている子供は20人くらいいる。
これはかなりの数だ。
これだけの子供に食事を提供するのは並大抵ではない。
実際、喫茶店の方では店の改築費の半分しかないのだった。

善意というのは、自分の身を切って行うから凄いのであり
大金持ちのソレは売名だと、私は思ってしまうから、こういう子供食堂をやっている人には偉いと思う。

だが、世間の大半はそうは思ってくれない。
ある日、机に「偽善者の息子」という落書きがあった。

息子は「偽善者」と呼ばれることが嫌だった。
だから、父に反発する。


 

俺は不平を込めた声のトーンで「もう、やめようよ」と伝えたつもりだった。だって、せっかく世の為人の為、自分を犠牲にしてまで働いているのに、どこの誰かも分からないような奴らから罵られるなんて、あまりにも割りが合わないではないか。

犯人は、石村という不良だと思った。
石村は、子供食堂の利用者で、それがバレたようなんだ。それで、彼がしゃべったのではと疑っている。

だが、石村の席を見ると、そこに落書きがあった。
「貧乏人」

このシーンに、この物語の1つの核があると思う。
子供食堂は「偽善」なのか、何も知らない人たちは、それを批判する。いたずら電話をかけてきたり陰口をたたく。
子供食堂を利用している子供は貧乏人なのか?。
どうして、彼らを馬鹿にしたり、差別したり、非難するのか?。
ただ、純粋に飢えた子供を救いたい人と、餓えている子供がいるだけなのに。
これは、この社会全体の問題なのに、どうして、彼らは馬鹿にするのか?。

このシーンは、自分の喉元にナイフを突きつけられたような気分になる。
無関心な私は、責められてでもいるような気分になった。
傍観者も罪があるのではないのか?。

そんな彼と、義父から酷い暴力を受けている少女のラブストーリーが、この物語だ。
ラストで、2つに分かれていたストーリーが1つに重なる。

そこが感動ポイント。
というか、二人の37年ぶりの再会よりも
彼女の弟がいい味だしてて、そこに感動した。

良かった。
中学生の逃避行とか、非現実的だけど
夕花(少女)が義父にボコボコに殴られていた時
助けに入った不良の石村と、主人公の彼の友情もカッコいい。

何か、もう、カッコいいポイントが多すぎて、最後はバレバレのベタな展開で、まぁ、それしかないよなという終わり方なんだけど、まぁ、これしかないと思う。
私は、こういうのは好きだ。
こういう物語は良い。

2020 7/22



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