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感想 鏡の国  岡崎 琢磨 反転、反転、また反転——!。おい、いい加減にしてくれよという反転ミステリーでした。


構造が特殊で二重箱になっています。

ある有名女流ミステリー作家の遺作ミステリーがあります。
ミステリーなのに真実だというのです。
その作品には削除された部分があるのだというのです。

それを作家の姪に見つけなさいと編集者は言うのですが・・・

作品自体もミステリーなので、どちらも謎解き
これは、作中での姪に対する叔母の作家の挑戦であり
読者に対する挑戦なのです

このミステリーの謎解きをしなさい
そして、この作品に削除されている部分を見つけなさいという
二重の箱構造なのです。

大御所ミステリー作家・室見響子の遺稿が見つかった。それは彼女が小説家になる前に書いた『鏡の国』という私小説を、死の直前に手直ししたものだった。「室見響子、最後の本」として出版の準備が進んでいたところ、担当編集者が著作権継承者である響子の姪を訪ね、突然こう告げる。「『鏡の国』には、削除されたエピソードがあると思います」――。


とにかく、反転しまくります。
仕掛けがいっぱいあり
僕は地雷を踏みまくりでした。

ただし、軽い。

著者は、『珈琲店タレーランの事件簿』というライトノベルなのですが面白いミステリーを出している作家です。
元々、感覚がライトで、今回出てくる主要人物四人も若い。
だから、会話とか行動か軽い。

そこに違和感を感じました。
ノリが軽すぎて・・・、この作品に合ってない気がする。

主人公、つまり、中の作品の語り手は、元アイドルで、今はウェブメディアで記事を書いている女性
友達のネットアイドル
コックのイケメンの幼馴染
同じ会社の同僚の男
全員が同い年で、何らかの精神疾患を抱えている。

元アイドルは、自分が醜いと思っている病気。
友達のアイドルは精神的に不安定
コックは、人の顔がよくわかんない。
などなど。

友達のアイドルは子供の時に、語り手のプレゼントした土産で火事になり顔に怪我をしている。

ようするに、ルッキズムがモチーフです。

アイドルの世界では、美は価値です。
美醜を毎日のように人気という形で示されている
そういう世界です。

だから、彼女は自分が醜いと思うようになった。
本当は美しいのにです。

精神科医の言葉が印象に残った。

いつかは失われるもの、いつかは失われるとわかっているものに、決して自分の一番の価値を置いてはいけないのです


美醜がすべてなんて世界は間違っていると言いたいのです。
しかし、それは簡単に覆るものではありません。

この世界はどこかで誰かが、今、戦っている世界です。
それは戦争という意味ではなく、人気とか、売り上げとか
数字の闘いです。

そして、美醜はその数字に直結している場合が多い。
ルッキズムを否定しても、それは机上の空論です。

この価値観は、この世界の隅々にまで浸透しきっている
もはや病です

ここに出てくるアイドルたちの
その苦悩は他所事ではありません。



2023 9 20


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