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馬鹿馬鹿しい避難訓練

10時に起きる学校火災

たまにニュースで学校が火事になったって出ますよね。多くは午前10時過ぎに出火しています。なぜだと思います?出火元は給食室なんです。その日のメニューは揚げ物です。
最近は、外部委託で作っているところも多くなってきていますが、学校には給食を担当する職員がいます。組合参加率100%なので、一斉に休憩をとります。ご存知の通り、給食の調理器具は巨大なので、揚油も大量です。当然ながら適温になるまでには時間がかかります。休憩時間が終わってから火を入れるとかなり忙しくなるようで、休憩時間前に火を入れ始めます。マニュアルで「目を離しては行けない」となっているのですが、前述の通り、一斉に休憩を取るということをやってしまう方達ですので、休憩時間中に火が回って、火災になってしまいます。

押さない駆けない喋らない戻らない

教員になって10年目ぐらいに勤務校の給食室から出火しました。勿論2時間目の授業中です。
緊急放送が入った時、子供たち、どうしたと思います?
誰ひとり喋ることなく、こちらの指示通り、廊下に並びました。すぐさま頭を触って人数を数え、全員いることを確認した後、校庭へ避難を始めました。
いつも訓練で使っていた経路に煙が流れていたのがわかったので、子供たちに説明して、「経路を変える」と伝えて避難を続けました。
無事にクラス全員を校庭に避難させ、再度、頭を触りながら人数を数え、全員いることを確認して、管理職に報告をしました。
サイレンが鳴り響き、消防車が何台も校庭に乗り入れ、報道のヘリコプターが飛び回る頃、子供たちの表情が緩み、少しお喋りも聞こえてきました。

避難訓練だけは

新規採用の頃から、「どんなに馬鹿馬鹿しいと思ってても構わないから、避難訓練だけは、真面目にやれ!」と最上級の真剣さで指導していましたが、内心ポーズのようなところもありました。
毎月馬鹿の一つ覚えのように避難訓練を繰り返している子供たちは「避難のプロ」です。最強のプロを育てるためには、常に真剣に、「絶対に一言も喋らせず」に訓練をしていくことが重要です。
おそらく、学校教育で最も大切な学びの一つであることは間違いありません。
さて、ヘリコプターが飛び回り、少し笑顔を見せておしゃべりをしている子供たちを見ながら、私はずっと追い詰められていました。何度も何度も繰り返し、子供たちを数え直して、人数を確認しても、しばらくすると自問が湧き起こります。
「絶対に、全員いるよな?」
数えても数えても、なかなか不安は消えませんでした。ようやく安心できたのは、教室に戻って、いつもの座席がきっちり埋まってる光景を見た時でした。

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