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『三宅雪嶺人生訓』一七

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/933730/1/21

〇誇大妄想亦可なり
 少壮者は元気に任かせて危険を冒し艱*苦を耐え忍ぶべし、能力なくして誇大妄想狂に類するあるも、其の甚だしからざるは其の儘に何事をか成すを得べく、唯だ甚だしきを検束し、若くは瘋癲病院に入るべし。
(*原文は「難苦(かんく)」とあるが、ふりがなを優先させ、ここでは「艱苦」とする。)

『日本及日本人』、『三宅雪嶺人生訓』七頁

【現代語訳】
〇誇大妄想もまたよろし
 年若く勢いのある者は元気に任せて危険を冒し、艱難辛苦を耐え忍ぶべきである。能力がないにもかかわらず誇大妄想に狂っている類もあるが、その狂い方の程度が行き過ぎていないのであれば、そのままの勢で何ごとかを成すことができるであろう。ただ、あまりに狂っている者は拘束する、もしくは精神科病院に入れるべきである。

【補説】
若い時分であれば、時に誇大妄想に狂うことも必要である。
逆に何かに対して狂うほどがむしゃらに突進しなければ、大成は望めない。
ただ、その狂い方が度を超せば、当然破滅に至る。

ちなみに、末尾に差別用語が使われているが、言うまでもなく戦前の文章によくみられるもので、雪嶺に偏見や差別意識は無い。

無知蒙昧による言葉狩り警察が横行しているが、それを無暗に出動させると、貴重な遺産を失うことになりかねない。

雪嶺は『真善美日本人』でこう述べている。
「蓋し文字のみに着目して思想を軽忽に附するは、現今の通弊の如くなれば、余は務めて之を避けたるなり」(「凡例」)
(表面上の文字のみに着目してその内実である思想をおろそかにすることは、現今よくみられる弊害であり、私はできるだけこれを避ける)

百年以上も前からすでに言葉狩り警察はいたようである。


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