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今日の味文字 筆文字 言葉 #204『心に鍬を打つ』

母の得意な畑づくりは、雑草との闘いのようでもあった。年中、草引きをして、季節に合わせて畑を整える。そして低い姿勢で鍬を振り上げた。種をまき、苗を植え、水や肥料を与えて育てていく。それは子育てのように、作物たちと会話をしながらの作業だった。母の心は豊かだった。おおらかで、どこまでも優しかった。きっと、畑仕事をすることで育てられたのではないかと思う。母は、汗を飛ばしながら、心にも鍬を打っていたように思う。決して楽な作業ではない畑仕事を、にこにこと笑顔でやっていた。きっと、母にとって辛い体験もまた、母の心を深く耕してくれたに違いない。


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