レビュー Andy Shauf "Wilds"
今回は、カナダのシンガーソングライター、Andy Shauf(アンディ・シャウフ)の通算7枚目のフルアルバムとなる新作『Wilds』のレビューを書いていきます。
【収録曲】★はシングル曲
1. Judy (Wilds)
2. Spanish On The Beach★
3. Jaywalker
4. Call
5. Television Blue
6. Green Glass
7. Wicked and Wild
8. Believe Me
9. Jeremy’s Wedding (Wilds)
■前作のアナザーストーリー
突如リリースされた感のある本作。
前作『The Neon Skyline』から約1年半ぶりと、比較的コンスタントなリリースがファンとしては嬉しいところ。
前作は約50曲レコーディングした中からピックアップされ、まるで小説のように一つの物語としてシームレスに繋がれた楽曲群であったが、本作もまた、当時の50曲の中からピックアップされた楽曲たちだという。
つまり、前作の物語の続き、あるいはアナザーストーリーとして位置づけられるような作品ということだ。
前作を聴いていた方ならお分かりだと思うが、本作の1曲目のタイトルにもなっている"Judy"は、前作からの物語における重要な登場人物なのである。
サブスクで1曲単位で聴くのが主流のこの時代にあって、やはりアルバムという形を一つの単位として創作してくれるアーティストは今や貴重な存在。
そんな彼の"小説家"ぶりにも注目しながら是非本作を楽しみたいところだ。
■彼特有の字余りかつ美しいメロディ
サウンド面としては終始リラックスした雰囲気で、より必要最小限の情報量へ減らしたミニマルでシンプルなアレンジとなっている印象を受ける。
本作のアートワークがそうであるように、楽曲たちもまたラフで、より肩の力を抜いて楽しむことができそうだ。
また、"アンディ・シャウフ節"とも言うべき、彼特有の字余りかつ美しいメロディは本作でも健在。
作品全体がモノトーンな音像で覆われている中で、鮮やかな色彩を与えてくれるのが、#5 Television Blueと、#6 Green Glassの2曲。特にGreen Glassは非常にキャッチーな楽曲だ。
先行シングルの#2 Spanish on the Beach、リリックビデオが公開されている#3 Jaywalkerに関しても、秀逸なソングライティングが光るさすがの楽曲といっていいだろう。
全体で9曲27分とかなりのコンパクトさで、気軽にアルバム全体を楽しめるのも魅力の一つだ。
余談になるが、Andy ShaufはElliott Smithの音楽から多大な影響を受けたことを公言しており、また楽曲からもそれがひしひしと伝わってくる。Elliott Smithを敬愛する全ての方へ是非ともオススメしたい、現代のインディーシーンにおける最高のシンガーソングライターの一人だ。
逆に、Andy Shaufは知っているけれど、Elliott Smithの音楽はまだ聴いたことがないという方には、是非こちらの記事も読んで頂きたい。