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第23週「恋のメロディ」#君の名は

1950年代の世相を語る上で、『君の名は』は外すことが出来ないでしょう。
1952年NHKのラジオドラマで放送開始してしばらくすると、人気が一気に爆発します。放送時間になると銭湯の女湯が空っぽになった、というエピソードは現代まで広く語られています。ラジオドラマから始まり、全3部に分けて作られた映画も大ヒット。

最初の主題歌「君の名は」をはじめ、「黒百合の歌」など関連する歌も多数作られますが、その全てが菊田一夫・古関裕而コンビによって発表されています。

 『鐘の鳴る丘』制作陣で新たに作られたラジオドラマは1952年4月に放送が開始されました。当初は戦争体験を題材にした社会派作品として作られましたが、半年経つと主人公の男女2人が戦争のためにお互い会えずにすれ違う、純愛物語として大きな話題を呼び始めます。

朝ドラ「エール」では、急遽台本を修正し作り上げていくシーンが印象的でした。

当時の聴取率で57パーセントを記録したというのもこの時期からです。
現在でもよく用いられる、ラブストーリーの表現手法のきっかけとも言える点で、日本のドラマ史に大きな功績を残します。

このヒットがきっかけで、1953年9月に佐田啓二・岸惠子主演で映画化されます。楽曲として広く親しまれている「君の名は」は、この初めて映画化した時の主題歌として作られました。

複数の歌手によって歌唱されましたが、最もヒットして著名だった物はやはり織井茂子歌唱によるものです。前年、木下惠介監督の映画『カルメン純情す』主題歌を歌って脚光を浴びた彼女は、この曲のヒットで日本を代表する歌手の一人となりました。

映画は三部に分けられて作られました。
第一部は1953年9月、第二部が同年12月、第三部が1954年4月。いずれも空前の大ヒットで、年間の配給収入ランキングはそれぞれ1953年度2位・1位、1954年度1位を記録します。「君の名は」以外の楽曲もヒットしますが、もう一つ挙げるとしたらやはり第二部で使われた「黒百合の歌」でしょうか。劇中にアイヌの娘を登場させて、楽曲もそれに合わせたかのようなアイヌの娘の燃え盛る恋の情熱を題材にしています。

アアーアアアアアアア…という掛け声で表現される織井茂子の歌唱は、映画とともに聴く人の胸を打つ歌唱となっています。このアイデアは、「イヨマンテの夜」の大ヒットから生まれたものと思われます。

 1953年、初めて大晦日にテレビ放送された第4回NHK紅白歌合戦でも「君の名は」と、伊藤久男が歌った映画第一部の主題歌「君いとしき人よ」が選曲されています。おそらく当時大盛況の名シーンだったと推測されますが、映像・音源とも現存していない上に曲順も正確には分かっていません。

ちなみにこの紅白歌合戦では初めてNHKスタジオから日本劇場に場所を移して開催されますが、大晦日にこの会場を確保出来たのは、まさにその年『君の名は』原作者としておおいに名を馳せた菊田一夫の伝手と言われています。(文:ミュージックソムリエ:柏井要一)

NHK連続テレビ小説「エール」                  (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00)
土曜日は1週間を振り返ります。その他NHK BSプレミアム、NHK BS4Kでもオンエア中です。    
*放送予定 3月30日〜9月26日
またNHKオンデマンドでも見逃し放送をご覧になることができます。

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