クリスマスイブ、大事な指輪を落とした

ハンドクリームを塗ろうと両手を出す。すると感覚がない。
たしかにさっきまでは指輪をつけていた圧迫感があったのに。
右の小指に薄い金色をした指輪はなかった。

やらかした2020優勝だ〜、これは。
やったった〜。

指輪は高校から卒業の時にもらった記念リング、Star Jewelryのやつ。かれこれ卒業半年前くらいからデザインを考えて、校章の中にある形を入れたり、卒業年の数字を入れたりしたデザインだった。

でも指輪がないと気づいて確かに悲しいは悲しかったけど、どちらかといえば、終電を逃した時のテンション感に一番近かった。

サイズを測ったのにも関わらず、薬指をぎゅうぎゅうに絞め殺そうとする卒業リングを落として、なにか解放されたような気持ちになった。

今のところ私にとっての高校は嫌だった記憶が多くてトラウマの場所なのだ。そのネガティヴがあるから、やってやろうという気持ちになる場所でもあるのだけれど。

だから指輪を落として、嫌いな場所と吹っ切れたような気がしてほっとしたのだ。もうあの場所は私になくてもいいのかもしれないと。

でもやっぱりむずむずした。あの指輪すごい高いし、一生ものの卒業リングとか言われると重いし。

指輪落とす　確率
落とした指輪　見つかった
指輪　落としたら

やっぱ私はこうやってすぐググる。

どのサイトも服のポケットとかに意外と入ってます、冷蔵庫の隙間から出てきますとか、当たり前すぎることが書いてある。それくらいはご丁寧に解説されなくてもわかってますって。

そしたらこんなサイトに行き着きました。
〜スピリチュアル〜大事なものを落とす意味〜

いやあスピリチュアルとかごめんだあ〜とか言いつつ人はちょっと弱るとこういうのを見る。(だから見たのだが…。)

貴方が大事だと思っていたものは、もう今の貴方には無くても大丈夫だからこそ自然となくなっていったのです。そして無くなった物の代わりに、幸運が舞い込んでくるでしょう。いいことが起きる前兆です。逆に無くなったと思った物が返ってきたら、その物とはまだ大切にすべき縁があるということです。大事にしましょう。

大体こんな感じだった。まあなんと占いらしい文面で。というか占いの言葉って意外と優しくすっと心に入ってくるんだなあ、怖。

そして案の定、母に指輪を無くしたことを言ったら凄まじい剣幕で怒られた。指輪を無くすという事実より、母親に怒られるということが結局怖かったんだよなあと合点がいく。

しょぼんとしながら私は次の日の朝指輪を探しに行く。最寄駅のすぐ前の信号を待っていた時すでに指輪はなかったということは、家のかなり近くで落としている。ノーメイク、マスク、髪ボサボサというQOL30くらいの圧倒的不審者の見た目で隈なく地面を見る。金色の輪が落ちていないかと。

なかなかない。落とし物としてもしかしたら届いているんじゃないかと、一番落とした場所で心当たりがある地面に面している建物に入る。メイクしてないこの顔めっちゃ人相悪いから相手に信頼してもらえないし、この建物なんの会社のビルかしらないけどすごいお堅い感じする、ヤ●ザの事務所とかだったらどうしよう。
1階で落とし物を探していると伝えると2階に言ってくださいと言われて、そしたら運良く優しそうなおばさんが出てきて、おばさんに落とし物があるか聞いてくれとお頼み申し上げる。ちょっと待つ。どうやらヤ●ザの事務所ではないらしい。いやでもああいうおばさんが実はヤ●ザとかだったらウケる。ウケてる場合じゃないか。

「ごめんなさい、届いてないみたいです」

すみません、どうもありがとうございます。
と言ってビルを出る。やっぱあるわけないか。
そうさ、もう清々しく諦めよう。

朗らかにビルを出て階段を降りる。
するとだ。

階段の先に目をやるとなんと金の輪っかが落ちてた。
え？
ほんとに？

拾い上げて手に取るとやっぱりあのデザインだった。
ヒールで踏まれたみたいでちょっと傷は増えたけど、まあ許します。

5分くらいあとで指輪を指から抜くのに奮闘するであろうことは覚悟して、今度こそ無くさないようにすぐ右の薬指にはめる。

よかった〜。あーでも見つけちゃったかー。

ほっとはしたけど、やっぱりこの嫌いな高校との縁はまだ切る時じゃないのかあ。

こんなにめそめそ不安で見つかってほしいという思いで結局探して、やっぱ嫌いな高校のもんだし出てこなくてもういいやーという気持ちにだんだんなってきて、出てきたら安心はするけどなんだかなーと思ってしまうんですよね。自分ってなんて天邪鬼なんだろうと毎度思いますけど今回も思いました。

それが今年のクリスマスのお話でした。
ということで指輪は大事にします。

おしまい。