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現実は、思い描いたハッピーエンドばかりではないけれど【8/21広島戦●】

もしこれが3時間の映画だったら、と、思う。クライマックスは、たぶん先週の試合だ。カツオさんがノーノーまであと一歩という素晴らしいピッチングで、野手たちは打ちに打ちまくった。カツオさんのこれまでの苦悩と、そして努力と、チームの思いがぎゅっと詰まった試合だった。

その二日前、村上くんはサヨナラ2ランを放った。一日前の試合では、一点差の試合を勝ち切った。そしてカツオさんの試合があった。その三連戦は、それまでのミスも、エラーも、失点も、あの日の悔しさも、サヨナラも、大量失点も、全部チャラにしてしまうくらいのインパクトがあった。

映画のクライマックスに相応しいハッピーエンドではないか。

でも現実は、そこでは終わらない。

一週間後、ヤクルトはマツダでサヨナラ負けをする。翌日は9回表のチャンスを生かせずにまた負ける。敗戦投手はカツオさんだ。ヤクルトの物語も、カツオさんの物語も、あの日の歓喜のままでは終わらない。あの日の余韻が冷めやらぬままの世界に、現実が襲いかかる。

そうだった、今年のヤクルトはめっちゃ負けるんだった…と、私は思い出す。もう数え切れないくらいのサヨナラ負けを目にしてきたんだった、と、数々の場面が思い浮かぶ。取った点はすぐに取り返されるし、チャンスでは打てないし、すぐにエラーするし、ミスするし、ノーヒットで失点するし、何かの決まりのように毎回四球を出すのだ。それがいつもの光景だ。

でもまあな、と、思う。現実はもちろん、映画じゃない。スポーツはとてもドラマチックだけれど、そしてそれは時にフィクションの世界を超えるけれど、もちろん、思い描いた結末なんかはそこにはない。でもたぶんそれが、野球の何より好きなところなのだ。

思い通りなんかにはいかない。好きなチームは負けに負ける。毎日のように私は傷つく。一体全体何を持ってこんなに弱いチームを応援することになったのかと深く考える。他にも選択肢はあっただろうに。でも、それでも、このチームが好きなのだ。負けても、負けても。(だからと言って負けてもいいとは言っていないけど。)

それはたぶん、日々の生活と同じだ。良いことも、悪いことも、思い通りにいかないことも、毎日のように景色はくるくると変わり押し寄せる。

物語は、あの素晴らしい試合では終わってはくれない。だけど、終わらない物語には、まだまだたくさんの可能性が含まれている。この先、カツオさんが本当にノーノーをする日がやってくるかもしれない。村上くんとエイオキが、同時に、歓喜の輪の中にいる日が来るかもしれない。今年悔しい思いを抱えたぐっちが、優勝を決めるサヨナラを打つかもしれない。

そこが終わりでないことは、本当は、希望だ。まだまだ続く物語は、いつか痛みを和らげてくれる。そしてもちろん、それからもなお、物語は続いてゆく。

だから今日も、今日だって、残塁の山を見上げながら、いつかこれが20点につながってゆくのだ…と、自分に言い聞かせながらそっと日本酒を飲むのである。夏の終わりはどうにもこうにも、いつも少し、切ないのだ。(まったくもう。)

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