【11/21日本シリーズ オリックス戦◯】長い長いその物語の、一日の断片を見られる幸せを
久々に、正座をしてテレビの画面を見つめた。6回表、そこまでパーフェクトに抑えられていた宮城相手に、なおみちはチーム初ヒットを放った。そして続くぐっちは、粘った末に8球目でヒットを打った。
それは、とてもとてもぐっちらしい、私が神宮で何度も何度も見てきた、きれいなヒットだった。
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京セラでのスタメン発表時、オリックスファンからも大きな拍手が上がりましたよ、と、現地にいるフォロワーさんが教えてくれた。ヤクルトファンではないフォロワーさんなのに、写真もたくさん送ってくれた。京セラのぐっちを見ながら、私は少し泣く。
いつもは野球の話をまったくしない同期LINEグループにも、「日本シリーズめっちゃおもしろいな」と、LINEが送られてくる。「高橋めっちゃいいやん」と、京都出身の同期が言うので、「亀岡出身なんやで。」と返すと、「そうなんや!そりゃますます応援しなあかんな!」と、返信が来る。
ああ、日本シリーズって良いなあ、と、私は改めて思う。そこにはたくさんの物語が映し出される。もちろん、いつもの試合も、一つ一つ、ひとりひとりの物語が詰まっていて、私はいつもそれに心動かされ、そしてこうしてこの観戦エッセイを書くに至っているわけだけれど、日本シリーズは見る人の数が増える分また、たくさんの思いが集うのかもしれない。
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ぐっちはこの京セラドームで、たくさんの、ほんとうにたくさんのヒットを打ってきた。主戦場が神宮に変わってからもまた、たくさんの美しいヒットを積み重ねてきた。得点につながるヒットもたくさんあった。何度も、神宮のホームベースを踏むところを私は目にした。
でも今年、ぐっちの姿を神宮で見ることはなかなか叶わなかった。チームが優勝を決める日も、ベンチにぐっちの姿はなかった。私はそれをたぶんどこかで少し、寂しく思っていた。いつも、なにもかもが「完璧」にうまくいくわけじゃない。そこにある物語が完全の形をとるわけではない。時間は流れ、いつも良い時とずっと同じでいられるとは限らない。それでも、叶わなくても、願ってしまう思いだって、ある。
ぐっちのヒットを願ってテレビの前で正座するのは、ほんとうに久々だった。そういえばいつもこうして、打ってくれますようにと祈っていたことを思い出した。そしてその祈りは三回に一度は叶えられていたことを。
久々にその美しいヒットを見たのは、京セラの、日本シリーズだった。古巣を相手に、ぐっちは初めて出場する日本シリーズで、ヒットを放った。近鉄ユニフォームを着て座っていたおっちゃんは、じっとぐっちのヒットを眺めていた。そこにはたくさんの物語があった。
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