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「はいジャンプ10回はじめー」と言い放つみやさまがやっぱりかっこいい話(たぶん) 【2/11ヤクルト浦添キャンプ】
目の前でみやさまがタクシーを待っている。私の一番の夢「86さまのiPhoneケースにみやさまのサインをもらう」を叶えるチャンスなのだけれど、いざ近くでお見かけすると全くもって1ミリたりとも声をかける勇気が出ない。
これから練習だしなみやさまほどのお人に私が迷惑なんかかけちゃダメだ・・・!という考えが頭を巡る。昔から基本的にこういうことを考えまくる性格なのである。へなちょこなのである。
私の夢を叶えるのはまたしばらくお預けです。
朝から小雨が降っている。この旅行中、結局毎日どこかしらで雨が降っていた。この季節の沖縄は雨季のようなものなのかな、ずっと降るということもないけれど晴れ間が続くということも少ない気がする。
そういえばこの2月の三連休というのは、昔からよく沖縄に通っていた。若い頃、まだ「有給もらいまーす」とか気軽に言えなかった頃(そんな頃が私にもあったのだ)、この三連休は動きやすくて旅費も安くてとても貴重だった。
宮古島のバーで飲んだくれたり、バスで今帰仁まで行ってテントに泊まったり。懐かしいなあと思い出しながら、ああそうだ、この風はあの頃の沖縄と同じだなあ、と思う。
素足にバレエシューズは大丈夫だけれども薄手のカットソーでは肌寒い。春はまだちょっと先だな、と、少し現実を見る。この感じ。
少しの肌寒さを運ぶ風に、スワローズの旗がはためく。今日も朝から河田さんはノックを打ち続ける。毎日、毎日、毎日。キャンプに来るたび私は、鬼コーチたちに心を持っていかれる。
基本的には人生に「他人の厳しさ」なんていらないと思って生きている。誰かに強制されてやることには、何の意味もないと思っている。それでも河田さんやみやさまの「厳しさ」には、なぜか心を動かされる。沖縄のおいしいものをたらふく食べて明らかに身体が重たくなっている私がまず河田さんのノックを受けたいです。と心底思う。不思議だ。そんなこと言われたって河田さんも困るだろうけど。(当たり前だ)
ブルペンでは、じゅり、シミノボくん、高梨くんが投げている。
高梨くんがヤクルトのユニフォームに身を包み、真剣にボールを投げ、そしてその姿がだんだん馴染んできているのを見ていると、なんだか泣きたくなってくる。
そのユニフォームを着ることには、きっといろんな思いがあるのだろう。悔しかった気持ちや、なにくそという気持ちや、これからだという気持ちや、いろんな思いが。全部を一球一球に込めて、神宮で投げていってくれるといいなと思う。
このキャンプで見た、新しくヤクルトにきてくれた選手みんなの活躍を心から祈ります。
高梨くん、シミノボくん、じゅりの後ろを、投球練習の終わったカツオさんが通る。「みんなライバルですから」とカツオさんは言う。自分の息子さんに近いくらいの選手たちを、ライバルだ、と。若い選手たちの隣で投げながら、自分の年齢を思うこともきっとあるだろう。でも、そんな若い選手たちを「ライバル」と呼んで同じ場所に立つカツオさんを、心からかっこいいなと思う。
練習試合では、立ち上がりが少し不安定だった寺島くんに、あきおが何度も何度も呼びかける。「ひとつひとつな、なるき!」「ナイスなるき!」その声がグラウンドに響く。
ファーストにいるたいしも、何度も声を出し、マウンドへ声をかけに行く。神宮では聞こえない選手たちの声がよく聞こえる。がんばれ、寺島くんがんばれ、と私も心の中で声をかける。
試合が終わり、夕暮れ時、星野源のドラえもんの曲が流れる中、若手たちがバッティング練習をする。その空気が持つものだけでまた涙が出てくる。なんせ末期なんである。走り続けるみんなに、心からエールを。
手前ではみやさまがとても嬉しそう(当社比)に、塩見にトスを上げている。「インパクトが弱かったらジャンプ10回、次弱かったらスクワット(?)10回な」とみやさまが言う。塩見はヘロヘロになりながらも「うりゃー!!」と叫びながら鋭く打ち続る。みやさまはそれでも「はいジャンプ20回、スクワット20回、はい、よーいはじめー」と言い放つ。(「言い放つ」という表現はみやさまのためにある。)
ヘロヘロオブヘロヘロになりながら、それでも大声で数えながら、塩見はジャンプとスクワットをする。もはや見ているお客さんからは悲鳴に近い声が聞こえる。
塩見は終わった瞬間、その場にへなへな座り込む。それを見てみやさまは満足げにその場を立ち去る。鬼・・・!!!
お客さんからは拍手喝采である。おつかれ塩見。
「みやさまの鬼コーナーだけハズレじゃん・・!他のみんな笑ってバッティングしてるのに・・!塩見どんまい・・!」とか言っていると、なぜか奥にいるおっくんが「え、俺!?」みたいな顔をして急に大声で数えながらスクワットを始める。終わった後おっくんは客席に向かって拍手を促す。私たちは爆笑で拍手を送る。ここまできたら予想通りだったけれどもやっぱりコータローもスクワットをさせられる。もちろんコータローにも拍手を送る。
暮れゆく沖縄の空に、若手たちの厳しい練習の音と、声と、そして笑い声が響く。今年も楽しみだ。この努力が、すぐに何かに結びつくほど、優しい世界ではないかもしれない。でも回り回ってこの若手達を強くして、いつか実るといいなと思う。その時までずっと、応援していようと、私はまた思う。
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