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クロスズメバチ vs アリ

【昆虫エッセイ】
河原で読書していると、目線の左端で何かがうごめいていた。
アリが4人がかりで今日のごちそうを運んでいるところだった。

緑色をした幼虫を引っ張っていく。
「おお、頑張ってるな」

と、そこへ見慣れないハチ一匹。
幼虫に狙いを定め突進した。

アリも応戦する。
下手すると自分が殺られるかもしれない場面。

2匹のアリはすぐに退散。
1匹は勇敢にも向かっていったが、ハチに足蹴りにされ飛ばされた。

最後の1匹。
幼虫を離さず必死にくらいつく。
しかし、その力の前では為す術もなかった。

ハチはすぐ近くに幼虫を引きずっていき、嚙じり始めた。
その場で食べるのか…?
とも思ったが、どうやらハチにとっても大きすぎるらしい。

口を使って上手に半分に切断し、咥えたまま飛び去った。

「やれやれ、大変な世界だな」

自然の中で日々行われているだろう戦いを見終え、本の世界に戻った。

5分ほど経った頃。
残りの半分がどうなったのか気になり目を向ける。

先程のアリたちが、何事もなかったかのように2匹で残り半分になった幼虫を運んでいる。

「ごちそうだもん、無駄になんてするわけないよね。半分でも残ってて良かったね。」

…と、そこへ今度は黄色いハチが一匹。
アリが応戦する間もなく、残りの幼虫半分を奪うと彼方に飛び去った。

一瞬の出来事だった。

残されたアリたちは、怒るでもなく、取り乱すでもなく、それぞれ別の方向へと去っていった。

アリに記憶があったなら。
どんな記憶として残るのだろう。

多分、クロスズメバチ。
もしかしたら、シロオビホオナガスズメバチ。

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