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小説「臣女」吉村萬壱

小説「臣女」 吉村萬壱


糞尿と不倫と夫婦愛の話し。

日頃から奥さんを大事にしないと、肥大化して醜くなってしまうから、世の男性は、女性を大切に扱いましょうという警告にも読み取れたり、色んな解釈が出来るお話しかなと思いました。


ネタバレします。


奈緒美が何らかの原因で死ぬのが、綺麗な終わり方かなと思ったら、そうでした。

ですが、

終わり方云々よりこの小説の醍醐味は主人公の石井文行の葛藤にあると思います。

この物語は、介護問題のことなのかなと思いながら読み進めていました。

世間に知られる羞恥から隠し続けてしまう…医師や行政に早目に相談に行っていればどうにかなっていたかも知れない。

とはいえ、可能性の問題であり、確証が持てない以上、進めない気持ちも分からなくもない。

端的に言って「怖い」だろうなと思います。

国や行政は一体どこまで踏み込めただろうか。

主人公は器物損壊などの犯罪者になるしかなかったのだろうか。

結局最後まで出て来なかったけれども、奈緒美の両親は一体どうしてるのだろうか…。

個人的には、夫婦の純愛モノという見方は出来なくて、「遊びの不倫」ってこういう感じなのかと勉強になりました。

主人公は、

異形化するまで奈緒美には本気では「愛してる」と言ったことはなく、不倫相手の敦子には本気で「愛してる」と何度も言ったことがあるらしい…

主人公曰く「つまりそういうことだ」

と。

この文章を読んだ時「意味が分からない」と思いかなり考えた結果、

人は、本気で愛している相手に対して「愛してる」となかなか言えないのかも知れない…

と、思いました。

不倫相手の敦子にしても、主人公への大量のメールは「敦子は自己憐憫していただけ」だと主人公が確信していたし…

「遊びの不倫」は、恋愛ごっこがしたいだけなのかなと思いました。

後半、奈緒美の状態をうまく想像出来なかったな…。

主人公がその後どのような罪に問われるのか気になってしまうのが、ミステリ好きの趣味病である。




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