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インターンプログラム【3】~「資料主体」と「利用者主体」~

この回では、「利用者主体」とは何か。また、その対義語にあたる「資料主体」とはどのような関係にあるか、についてお話します。(2021.12.3)

🌕〈S〉
「Museumソムリエ」公式noteのプロフィール部分に、
「利用者主体によるミュージアムシーンの形成をめざす」
と書いてありますが、
この「利用者主体」とは、
どういうことを指している
んですか?

🌑〈AC〉
「利用者主体」は、
「ミュージアム事業のあり方」を指す言葉です。
「資料主体」と対になる考え方が「利用者主体」です。

🌕〈S〉
「主体」を辞書的に整理してみると、
①行動、作用の主語となるもの【⇔客体】
②物事を構成する上で中心となっているもの
ということですが、
「資料主体」とはどのような考え方なんですか。

🌑〈AC〉
博物館学(博物館運営のための学=博物館運営論)は、
「資料主体」の考え方を基本に形成されています。
したがって、
「ミュージアム事業」も、
「資料主体」の考え方が基本
になっています。

🌕〈S〉
「資料」というのは、
「収集保存」の対象を「博物館資料」とした場合の「資料」のことですよね。

🌑〈AC〉
資料主体による「ミュージアム」は、
「資料がなければミュージアムではない」と考え、
「資料が一番大事」だと考えます。
ですから、
学芸員は「資料」に精通していることを求められますし、
「収集保存」「調査研究」ができなければなりません。
また、
博物館法は、そのような学芸員を配置することを求めています。

🌕〈S〉
「資料主体」の考え方が基本だとしたら、
「利用者主体」という考え方が、なぜ必要なんですか?

🌑〈AC〉
それは、
「ミュージアム事業」が、
「利用」と相対する「運営」だからです。
「利用がなければ成立しない」のが「運営」です。
ですから、
「利用されなければミュージアムではない」と考え、
「利用者(=利用する自分自身)」を大切に考える必要があるわけです。

🌕〈S〉
【1】「運営論」と「利用論」でやりましたね。
「運営」と「利用」は相対して接触し、接点である「空間」を活性化する

🌑〈AC〉
【2】「ミュージアムの4つの機能」に出てきた4つの機能(①収集保存、②調査研究、③展示公開、④教育普及)のうち、
「①収集保存」と「②調査研究」は、「資料主体」の考え方だけで成立します。
なぜなら、
ミュージアムとしては「バックヤード機能(=利用できない)」だからです。

🌕〈S〉
確かに、
「③展示公開」と「④教育普及」は、
「利用者」がいなければ存在する理由がなくなってしまいます。

🌑〈AC〉
「利用者」がいなければ「展示」の存在理由がないとすれば、
「展示のないミュージアムは存在しない」
ことと合わせると、
「ミュージアム」の存在理由が消滅してしまいますね!

🌕〈S〉
あら、大変💦
早く「利用者主体」の視点で見直しを始めましょう!

🌑〈AC〉
慌てることはありません!
ミュージアムだけでなく、
ほとんどの事業領域は、「運営論」でしか組み立てられていません。
明快に「資料主体」であるミュージアムだからこそ「利用論」が生まれたのですから。

「利用者主体」の視点で、見直しをしていく時、視点の基本となるのが「利用論」です。
【1】「運営論」と「利用論」で示した「運営組織」のカタチが、その一例です。
左のピラミッド型組織は、
「運営論」に基づく組織構造ですが、ミュージアムにおいては「運営者視点」による「資料主体」の考え方が基本になっています。
右の逆ピラミッド型組織は、
「利用論」に基づく組織構造で、「利用者視点」による「利用者主体」の考え方を基本としています。

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