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十三代目市川團十郎白猿襲名披露「十二月大歌舞伎」夜の部3

歌舞伎座夜の部の完結編です。

前回の記事で猿之助さんのことを書いていたら長くなってしまいました。全体の感想も残しておこうと思います。

「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」

幸四郎さんの口上から始まります。ここだけの登場です。なんて贅沢なのでしょうか。成田屋の助六と言えば河東節の演奏です。幸四郎さんが紹介して曲も始まります。

で、すぐには助六は登場しません。なかなか出てこないのも心憎い(笑)初見の時は、ここまで引っ張らなくても。。と少し焦れたのを覚えています。今の私はそれまでも十分に楽しめるようになりました。

舞台転換はなく、ずっと吉原の三浦屋前。そこに尋常ではないくらいの役者たちが行き交います。最初に茶屋廻りの團子くん染五郎くんが揚幕から、上手からは歌之助くん玉太郎くんが登場。二人一組で歩いてきてすれ違う。セリフは無し、この場面だけの出演です。

もったいない(笑)おそらく気づかない人もいたと思います。こんな感じで人気役者が大勢登場するのが助六。目が足りません。

こういう時のイヤホンガイドです。私は登場人物が多い時は借りるようにしています。主要な役者は紹介が入るからです。三階席だったので全体が見渡せてすぐに探すことができました。

以前の助六でもそうだったと思うのですが、イヤホンガイドの三階客へのフォローがすごかった。助六の花道の出。七三までゆっくり進み、なかなか本舞台にやってきません。三階からはあまりよく見えない時間、三階客へ語りかけてくれてた(笑)それに衣装のことや、所作の意味、登場人物関係などなど。助六ってストーリーがわからなくても面白いけど、バックボーンや衣装、動きの意味、決まり事がわかるとグッと面白さが増してきます。お勧めです。


さて、團十郎さんの助六。江戸一番の男伊達と言われるほどイイ男。團十郎さんのビジュアルが完璧です。年を重ねたからか、襲名がそうさせるのか、今回はハッとさせられる瞬間が多かった。この方の助六は別格かと。七三で長いことポージングみたいなことをします。どれもピタッと決まり、傘の角度まで計算されたように心憎い。傘の牡丹の模様にも注目してみてください。面白いですよ。

花魁たちが目をハートにするのも納得です。恋人の花魁・揚巻は玉三郎さん。今回で揚幕を演じ納めるそう。15日までの出演です。観ることができてよかった。まるで絵から抜け出たような美しさ。頭の後ろの飾りが海老とゆずり葉の正月飾りでびっくり。海老をのせます?(笑)実は揚巻の拵えは五節句を取り入れられているそう。帯は’鯉の滝登り’で端午の節句。。など。これは江戸時代に岩井半四郎が取り入れた趣向なのだそうです。


玉三郎さんの女方は、いつも瑞々しさを感じます。だから團十郎さんと並んでも全く違和感なし。とてもお似合いでうっとりでした。何故だかドキドキしました。

揚巻の妹分、白玉は菊之助さん。華やかで強さを感じる凛とした雰囲気が素敵でした。

助六が登場した後は、濃いキャラの皆様が次々に登場しては去っていきます。巳之助さん、左團次さん、猿弥さん、九團次さん市蔵さん、勘九郎さん、猿之助さん。このメンバーを並べただけでも面白そう。次々に團十郎さんに絡んでいきます。

助六と揚巻に横恋慕するのが意休です。彌十郎さんが演じています。初役とは驚きました。大河ドラマで人気者になったのが追い風になったのでしょうか。大役を務めています。初役に見えないほど貫禄ありすごい。私は意休に愛嬌みたいなものをいつも感じるのですが、彌十郎さんはドストライクで好きでした。

そして、ラストに登場するのは最も強い助六の母、吉弥さん。それまで怖いものなしだった助六が、急に小さくなるのが可愛い。吉弥さんには愛を感じるし、隣にいる揚巻と嫁と姑のようになるのもほっこりします。16日からは玉三郎さんが母を演じます。

ちなみに、揚巻は七之助さん、白玉は梅枝さんになり、Wキャストの後半戦がスタートです。先月の菊之助さんに続き、次世代を担う揚巻役者二人がいよいよ登場します。玉三郎さんは揚巻を演じ納めと言っていますので、ここでバトンタッチになるのかと思うと感慨深いです。

夜の部は千穐楽までチケット完売です。口上から助六まで。。これだけ多くの役者さんを舞台上で見たのはいつぶりだろうか。本当に嬉しい。疫病禍、いつも夢見ていた光景です。感謝。歌舞伎座の賑わいが戻ってきました。

でも歌舞伎座の本当の闘いはこの後からだと思っています。襲名公演だけに終わらず、来年もずっと盛況になりますように。そのためには、團十郎さんがもっと歌舞伎座に出演してほしいし、その世代の共演をもっと増やしてほしいと切に願っています。


襲名公演が希望の光となりますように。


aya


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