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【百物語】成仏?

「さあ、夏も終わりということで、次のコーナーは恒例の超常現象対決シリーズです。
 高槻教授、葱沢編集長、よろしくお願いしま~す」


「今日はもう、教授のために珍しい写真を持ってきましたよ」
「あ~、もう、やだやだ」
「これ、海水浴場なんですけどね、毎晩、浜辺に出るんですよ~」
「なに、これ? ただのストリーキングじゃないのっ!」
「よーく見てくださいよ、足元が写ってないでしょ」
「光線の関係かなんかでしょ。
 だいたい、あんたね~、ここ、モザイク入ってるでしょ!
 TVだからしょうがないんだろうけどさぁ。
 そんな加工をした写真を信じろって言うのが無理でしょうが~」
「実はね、そこなんですよ、教授」
「そこってね~、そこにはアレがあるからモザイクが入ってるんでしょ」
「違うんですよ、撮影者も私たちも、何も加工してないんです。
 最初からモザイクが入った幽霊なんですよ」
「モザイクが入った幽霊?」
「彼ね、ここで素っ裸で溺死したんですけど、霊感の強い人だったはずなんですよ。
 で、自分が幽霊になっても局部をさらすわけにはいかないので、彼自身がたぶん
 無意識のうちに霊的モザイクを作りだしているわけですね」
「霊的モザイク~?」
「そうです。心霊写真の多くに見られる独特の”ぶれ”、それを霊の力で強化した
 ものが霊的モザイクです」
「彼がつくり出したというの?」
「そう、その通りです!」
「なんで、そんな事があなたにわかるわけよ?」
「実は、彼がコレクションしていたアダルトビデオのモザイクと処理方法が完璧に
 一致してたんですよ」
「あんた、なんで故人のビデオコレクションの中身を知ってんの?」
「いや、ある筋からの情報なんですけどね」
「ある筋って、どの筋なの! まさかいつものCIAやFBIとか言わないよね」
「いつも言ってますけど、本当の事を言えないから、”ある筋”なんですよ」
「で、その”ある筋”がモザイクの入れ方を調べたの?」
「そうみたいですよ」
「だいたい、故人のプライベートな事、公開していいの?」
「だから、これ、かなり秘密なんですよ」
「だったらTVで喋りなさんなっ!」
「いや、教授がまた喜ぶと思って」
「わたしは今まで一度も喜んだことないよ!」
「でも、モザイクの話を聞くと、なんか信憑性あるでしょ?」
「あんた初めに言ったよね、”毎晩、浜辺に出る”って。
 だったら、私を連れていきなさいよ」
「いや~、残念だな~、すれ違いなんだな~」
「なにがすれ違いなの?」
「彼ね、成仏しちゃったんですよ」
「成仏?」
「ええ、先日供養したんですよ。海パン持って行って」
「なんで海パンで成仏するの?」
「彼が現れるのは必ず満ち潮になる時なんですよ。
 でね、たぶん脱げたパンツが浜辺に打ち上げられて来るのを探していると思った
 んですよ。
 だから浜辺にそっとパンツを置いておいたんです」
「それで成仏したの?」
「ええ」
「もう出ないの?」
「パンツと共に去っていきました」
「そんな話を科学者に相談するわけ?」
「まあ、そういうことになりますかね」
「あきれて物も言えんよ」
「じゃあ、消えたパンツはどう説明するんです」
「波にさらわれたんでしょ」
「潮の関係から見て、沖に流れるわけないんです」
「じゃあ、そのへんに沈んでるんでしょ」
「でもスキューバ隊は発見できませんでした」
「あんた、パンツ一枚にスキューバ隊を連れて行ったのかっ!?」
「やっぱり、そこはちゃんと科学的にやんないと」
「そういうのが科学的ってことじゃないんだよ!」
「そんなこと言ったってねえ、先生...」
「あんたのやる事、信用できないんだよな」
「ちゃんとね、海水パンツ、ブリーフ、トランクス、の3種類を用意したんですよ。
 で、思ったとおり、海水パンツだけが無くなったんですから。
 波にさらわれたなら、全部なくなるはずでしょ?
 このへんを先生はどう説明するんですか。
 ねえ、先生、聞いてます?
 ねえ、先生!」


「はい、今週も決着は着きませんでしたね。
 では、CMの後はインターネット上に氾濫するオンライン小説の・・・・・・」



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