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むるめ辞典

■故郷

[読]ふるさと

故に郷

[例文]
男たちは海と山に挟まれた鉄鋼所か山と海のあいだの造船所かのどちらかで働いていた。私の父親も鉄鋼所の下請け企業として生計を立てて暮らしている。

彼らは海に面した山を少しずつ削って、そこに大きな家を建てていった。屋敷風の古い家の多くは平地に並んでいたが、山を登って行くほど新しい家屋が増え、いつしか新興住宅地になった。

お金持ちばかりのこのあたりで一番荘厳な家の長くて白い庭壁は、海に出て船上から見ると山の中腹にかかる雲のように見えるほど立派だった。

海は静かに凪いでいて、まるでこの辺りの女の人たちのように我慢強く穏やかに振る舞っていた。何年かに一度、怒って荒れ狂ったり、攻撃的に威圧してくることはあったけど、それでも永く街と家を平和で美しいものにした。

サポートしていただいたお金で、書斎を手に入れます。それからネコを飼って、コタツを用意するつもりです。蜜柑も食べます。