正しい答えはない

「出生前診断の本質は選択的中絶である」は,赤ちゃんになにか病気がみつかったら中絶すべきだと進めているわけではありません.産むか産まないかはむずかしい決断ですが,何十人にひとりはそれを決めなければならない状況に直面することになるのです.

出生前検査を受ける前に,産むか産まないかという決断がせまられる可能性があることを,ちょっとでも考えて覚悟する必要があるということです.そうでなければとつぜん深い深淵の縁に放りだされることになります.時間は限られています.それまでにこの谷をこえなければなりません.

多くのひとが逡巡してしまうのは,正しい答えを求めてしまうからでしょう.あとで後悔しないために正解を求めがちです.しかし残念ながら「正解」というものはない.正解かどうか最後までわからないといったほうが近いかもしれません.試験とは異なって事前に正解が用意されているわけではないからです.

わたしたちはどうしてもどこかにある唯一の正しい答えを選びとろうとしがちです.しかし正解はすでに存在しているのではなく,いつも事後的に決まるものです.「正しかった」「正解だった」というのは常に過去形で表現されます.結果は常にあとから振りかえられ,よかったかどうかを評価されるものです.

結果は必ず自分があとからどうだったのかを振り返って評価することになります.選択の結果に納得できるかはかならず事後的に自らの人生のなかで決まる.だから意思決定は,それをおこなうとき以上に,その後の自分がどのように生きていくか,そのなかでどのように納得できるようになるかが常に重要です.

意思決定には正解がない.正解はあとから決められていきますが,それは自分自身が生きていく人生のなかでどのように納得できるかによります.だからどちらを選んでも正解であることも,逆に失敗であることもあるのです.正解だったという確信をもつのはその後に自分がどのように生きているかによります.

どのような状況でも,あらかじめ用意されている正しい答はなく,同時にまちがった答もありません.そこにあるのはどちらを選ぶかの選択するだけです.自分の選択を正しい答と納得できるかは,そのあとにどのような生をおくるかによります.だからだいじょうぶ,自信をもって選びなさい.見る前に跳べ.

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