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ギャスパー・ノエ監督の映画「クライマックス」レビュー「オトナはコドモの「恨み」で…未来永劫地獄の業火で焼かれ続けろッ!」。

「ギャスパー・ノエ」という人間のコトを僕は何も知らない。
このまま何もせず大過なく生きれば一生知るコトは無かったと思う。

しかしこの世にはありとあらゆる箇所に
「縁」という名の魔界へと続く「罠」が仕掛けられており…。
今年の初めに皐月臨さんという同人作家さんが執筆された
ウルトラゴアホラー映画レビュー同人誌
「映画の独り言」を読む機会があり…。

皐月さんがレビューで人を殺すキチガイだと気付いたときは手遅れで…。
ルカ・グァダニーノ版「サスペリア」(通称「ルカぺリア」)…。

パスカル・ロジェ監督の「ゴーストランドの惨劇」…。

…を見詰め直す切っ掛けを与えていただいた恩人であり…。
一度切れた「縁」を結び直させる
「妖怪縁結び」であるとの評価が確定しました。

ギャスパー・ノエ監督の映画「クライマックス」も
「映画の独り言」でレビューされており…。

「22人のダンサーが雪山の小屋で打ち上げパーティー!」
「だがパーティーの酒にはドラッグが混入されていた…」
「そして酒とクスリでキマり切ったダンサー達は正気を失って行く…」
「人間が作る地獄絵図…狂気をこれでもかと映し出す」
「出演者の殆どが俳優ではなくダンサー!」

…僕はエロ同人に脳を侵されているので

ドラッグでラリったダンサーたちの乱交パーティが展開されるのかしら…。

と妄想を逞しくして前屈みとなって期待していたのですが…。

今回ネットのブックオフで「クライマックス」の
円盤を安く購入する機会を得て今回初めて視聴したのですが…。

おう。

コレから僕は…。
恐らく誰も書いたコトのない…私怨に満ち満ちた断罪レビューを書くよ?
「恨み」こそが僕のレビューの力の根源であり…。
僕の「恨み」でこの映画を「裁いて」やろうと言うのである…。

映画が始まると
アナログテレビによる登場人物紹介のビデオインタビューが流れ…。
テレビの両脇にVHSビデオと書籍が積まれている…。
この話は1996年という設定なのでDVDが登場するかどうかって時期…。
つまり主たるメディアはVHSとLDで…。
LDは薄っぺらいので積んだ際に
映画のタイトルが画面映えしない欠点がある。
従ってVHSビデオが積まれてるのは作劇上の要請で…。
「僕のスキな映画を見てよ!」
というノエ監督の「自分語り」なのだ。

アルジェント監修版「ゾンビ」,アルジェント版「サスペリア」,
イザベル・アジャーニの「ポゼッション」,小林正樹の「切腹」…。

いやあ…ノエ監督の御趣味が相当僕好みで俄然好感度が上がりますなあ…。

映画を観るとサングリア(酒)と何者かによって
サングリアに混入されたLSDによってダンサーがハイになって
「何か」に取り憑かれた様に悶絶を始めるのは「ポゼッション」…。

パーティ会場がラリッたダンサーには出口の無い迷路として映る描写は
「ショッピングモール内部」が「世界の全て」の「ゾンビ」…。

更にパーティ会場が「赤」「青」「緑」の「原色の迷宮」として
描かれるのはエレナ・マルコスの「魔力」でバレエ学校内部が歪んで見える
「サスペリア」…この「分かり易い」演出!

つまりい冒頭の登場人物紹介のテレビ画面でえ
テレビ画面の両側に積んであるVHSビデオと文献を見ればあ
この映画作るのに「参考にしたもの」が一目瞭然ってワケ。
だんだんノエ君があ…。
出席するだけで単位をくれる大学教授に見えて来まあす。

ちっとも「難解」じゃない。
ノエ君は自分の「スキ」で「世界」を構築してるだけ!

僕はねえ…。
この映画で「チビッ子」に一番感情移入したんだよ…。
母親に小部屋に閉じ込められ…。
外から鍵を掛けられた「チビッ子」にね…。

この映画はさあ。

オトナが酒飲んで酩酊して!
「人が変わる」地獄を見せつけられる「子供の恐怖」を描いてるんだよ…。
この映画はな…。
「飲み会の二次会三次会のドヨーンとした空気」を延々描いてるんだ…。
酒飲みの方には「飲み会あるある映画」なのでしょうが…。
僕は下戸なので
「世間のしがらみで二次会三次会に出席せざるを得ない嫌な感じ」
が甦って来るのです…。

もうひとつはね…。
例えオトナが酒に逃げても必ず朝がやって来て!
酔いが醒めて「現実」と向き合うトキがやって来ると描いてる。

幾らオマエが酒に逃げようと!
「誰」が父親か分からない子を孕らんだ「事実」は消えないッ!
ムシャクシャして妊婦の腹に蹴りを入れて流産させた「事実」は消えないッ!
子供を監禁して死に至らしめた「事実」は消えないッ!
妹に道ならぬ恋をして一線を越えた兄の「(既成)事実」は消えねえんだよ…。

飲んだくれはひとり残らず死ねェェェェッ!

僕は下戸で梅酒をチビチビ舐めるコトしか出来ないのは!
酒の力を借りないと子供を叱れないオトナを見て来たからだッ!
母親が飲みに行って帰らず!
寒空の中…何時までも何時までも「母親の帰り」を待ち続けたからだッ!
酒は!「弱い人間」が飲むものなんだ!

オトナは酒を飲んで「浮世の憂さ」を忘れたいのだろうが!
「浮世の憂さ」は執拗に追って来る!
朝が来て酒気が抜けたら「浮世の憂さ」が!
「お早う♪」とオマエを起こしてくれると言う愚行を!
一体何回繰り返せば気が済むんだ!

死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ死ねッ!

酒に逃げるヤツは死ねッ!

この映画は…幾ら酒やLSDに逃げても…。
必ず「酔い」の醒める「朝」がやって来るコトを描いており…。
酔っ払いの観た…「一夜限りの夢」は!
「現実」にブチ砕かれて原子分解されるコトを描いているのである…。

オトナは酔っ払って…。
さぞ気持ちがいいでしょうよ!
だけど…コドモは…決して酔っ払うコトの無いコドモは!
ずっと地獄の真っ只中に!
ずっとシラフで佇んでいるんだッ!

オトナはコドモの「恨み」で!
未来永劫地獄の業火で焼かれ続けろ!

ノエ監督はとても「分かり易く」…。
僕と「映画の趣味」がとても近しいってのが
この映画の収穫でした。

ノエ監督の新作の「ヴォルテックス」で…。
何で「現在のアルジェント監督」が主役なのかしらん…と思ってたけど
この映画観れば「答え」は一目瞭然。
「ノエ監督がアルジェントのコトをスキ過ぎるから」で…。

スキなヒトを自分の映画の主役に据える…。
このやり方は「悪魔のスケアクロウ」の
デッド・ヴァ―ノンのコトがスキ過ぎて
ワザワザロシアまでヴァ―ノンを招いて賓客待遇で
自分のゾンビ映画の主役に据える
「ゾンビ・インフェクション」のアレックス・ウェスリーと
「ものの考え方」がピッタリ一致していて
要するにノエは「オタクの鑑」だと言いたいのです。




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