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コラム「『血が青ければ残酷ではない』という詭弁。」

僕はホラー映画を愛好しておりますが,
ホラー映画には残酷描写が付きもので,
しばしば自称「有識者」に攻撃されます。

「こんな残酷な映画を子供に見せる訳には行かない」ってね。

なんでいちいち子供を引き合いに出すのか。
…はこの際,置くとして,そうした残酷映画排斥運動に対して
大昔に映画会社が考案した詭弁が
映画の残酷描写の場面で画面全体に青いフィルターを被せ
「血が青ければ残酷ではない」「従って上映しても構わない」
という主張です。

僕が最初にこの詭弁と出会ったのは
「宇宙戦艦ヤマト」というアニメ作品でした。
「ヤマト」は宇宙の謎の星ガミラスから遊星爆弾の攻撃を受け
地球が放射能汚染で人類絶滅の危機に瀕したとき
イスカンダルという「西遊記」で言う所の「天竺」に行けば
「放射能除去装置」という「世にも有難いお経」が貰えるとの
イスカンダルよりの使者からの親書を受け,
戦艦大和を宇宙戦艦ヤマトに改造してイスカンダルへ向かう訳ですが
ガミラスは地球への移住を目途として
自分達が住むのに最適な環境を構築する為に遊星爆弾を投下しており
放射能を除去されては堪ったものではない。
なのでヤマトの行く先々でガミラスの妨害工作を受ける訳で,
「西遊記」で言う所の「妖怪変化」がガミラスに相当します。

ところがガミラス人が僕達と変わらない外見をした宇宙人だと判明し,
「人間同士で殺し合う」
のが問題となって,そこで急遽考案されたのが
ガミラス人の肌の色を肌色から青色に変更し
体内を流れる血の色を赤から青に変更して,
「ガミラス人は青い血が流れており
人間じゃないから殺しても問題ない」
という理屈でした。
戦争してる相手を殺す理屈として
「相手はケダモノだから」
「相手は鬼畜だから」
「相手は侵略者だから」
「相手は異端だから」
「相手は青い血が流れてるから」
等々がありますが要するに
「相手は人間じゃないから殺していい」
と言ってるのです。
僕はこうした理屈は「詭弁」だと考えます。

最初に上げた「血が青ければ残酷じゃない」という理屈は
「画面内で死んでいるのは人間じゃないから残酷じゃない」と
言っているが故に僕は「詭弁」と呼んでいるのです。

ある映画の円盤の特典映像で「1978年日本劇場公開当時の本編」を視聴し
残酷描写の一部がブルーフィルター処理されているのを見て
そうした「詭弁」が生きていた時代を思い出し,
止むを得ない処置とは言え何とも言えない感慨に支配されるのです。

こうした規制は早く無くなればいいと心から思います。


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