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黄色い背表紙


壁の一面を覆う本棚に
幼児向け絵本から大人の新書まで
あの頃より少し伸びた背丈で
向かい合う

顔を寄せると時間の匂い
ざらざらしていて懐かしくて
少し酸っぱい


ちょうど目線の高さに
今でも惹かれる黄色い背表紙
当時は少しかかとを上げて
見上げていたのかも

まだスカート丈と前髪が
ステータスだったときに
出会ったハードカバー


読書を好むことが
なんか洒落てるつもりで
背筋を伸ばしていたっけな

物語終盤の展開を
辿る目が焦って
読み疲れたっけな


15年経って読み返してみると
同じ感動と
新しいほろ苦さと
所在なさげに疑念まで

この人の気持ちが
知っているもののような気がした
この子の気持ちが
遠くに置いてきたもののような気がした

本が色褪せるそばで
わたしも大人になってしまった


…………………………

ここまでお読みくださりありがとうございます。
いつまでも子どもだな、と思う反面で
時間が自分を子どもじゃなくさせているような気もする
この頃です。

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