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明日なくならなくても10年後にはないかもしれない

日本に生まれて良かったなって思う瞬間ありませんか?

白いお米が美味しいな、とか。鮭は鮭でもやっぱり紅ジャケだよな、とか。日本酒ってすべてを包んでくれるよな、とか。(あれ、グルメばっかり??)

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白い花びらの桜がきれいだな、とか。梅雨の雨は鬱陶しいけど、雨にしっとり濡れた苔が瑞々しいな、とか。

海外に行く機会が多かったので、私は外国も大好きです。

オーストラリアはカラッと晴れて、フラットホワイトは唯一無二。フランスで一番最初に食べたパン・オ・ショコラはバターの香りが芳醇で、自然と頭の中ででcheek to cheekが流れました。ベトナムのバインミーは食べるたびになぜかニキビが一つずつ増えていったけど、現地にいるうちにいっぱい食べておきたい美味しさ。

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それぞれ素晴らしい文化を持っていて、毎日感動していました。


でもやっぱり、偶然日本に生まれたのだから、その土地に文化にアイデンティティを持っていたいなと思う。
それぞれが自分たちの文化を大事にして、他の文化にリスペクトを持っていたら、どんどん素晴らしい世界になるのになと、理想論だけど、そう思う。

伝統的なものを愛することは、決して古いことではなくて、新しい時代でその伝統や文化がどう輝くかを考えること、感じること。

その道はずーーーーーっと未来まで続いていると信じたい。


でも、今誇りに思っている日本のたくさんの素晴らしいもの、こと。
これから先も本当にずっとあるのかな。新しいものが生まれることは素晴らしい。でも、今大切に思っているものが、気づかない間に少しずつ失われているとしたら?

伝統工芸は後継者がいなくなり、着物は着れない、来ていく場所がないからと箪笥の中にしまわれたまま、いつか居場所を失ってしまう。

海外の人に、日本の○○は素晴らしいね!と言われても、それについて何も語ることができない。実は、こんなところがもっと素敵なんだよ、意外にもこんな歴史があるんだよ、これからこんな可能性を秘めているんだよ、と教えてあげられない。


私は日本に生まれたその偶然を大変愛している。

ちゃんと、愛せているかな。これからも続いていくように、今この瞬間にある日本の美しさに、自分も関われているかな。

言葉として表したことはないけれど、なんとなくずっとこう感じていたような気がします。

2年前、ずっと興味のあった長唄三味線をご縁で始めてみました。
湿度で変わる弦の音。雨の日はその水分の重みをもっている、カラッと晴れた日にはポーンと音が遠くまで飛んでいきそう。

三味線の音は時に鍛冶をうつ音になったり、波の揺らめきになったり。こんなにも変幻自在の楽器だったとは。

そしてそれから1年ほどして、今度は直観的に好きかも、と思い日本画を習い始めました。

好きかも、と思った理由は画材でした。日本画は、岩絵の具という、天然の石を粉状にした絵具と、その接着剤となる膠という動物のコラーゲンを混ぜて着彩していきます。

自然由来のものを使って、日本の花鳥風月を描く。そして、習い始めてから知ったのですが、昔からある日本画の特徴の一つとして、光と影はあまり描かないのだとか。花なら花そのものの色で描いていく。

日本人は、楽器だったり、絵画だったり、いろんなものを緒(いとぐち)として、日本の自然の美しさを表現してきたんだと、肌で感じることができた瞬間でした。

今はなんでもネットを使えば調べられる時代になってその恩恵を受けながら生活しているけれど、こうして自分が実際にやってみたり、関わっていくことで初めて腑に落ちるというか、ふわふわしていたものが根付いていくということもあるのかな、と思いました。


好きだな、と思っていたものが、実は少しずつ失われつつあり、気が付いたときにはもう取り返しがつかなくなっていた、なんて悲しすぎる。

本当に微力ではあるけれど、これからも大好きな日本の文化を守ること、これからの可能性を広げていくことに関わっていきたい。と、思うのです。


最近では、三味線・日本画に加えて、このような活動にも参加させていただいています。

NPO 法人 美・JAPON では、時代着物と着物を使用したドレスを主役とした、アートパフォーマンスを行うことで、日本文化を世界に発信するという活動を行っています。


伝統的な装いの着物や、時代着物をリメイクしたドレスをまとったモデル・ダンサーが、和楽器や洋楽器、いけばな、能舞とコラボレーションする新しい綜合ステージパフォーマンス。

伝統芸能のような、コンテンポラリーダンスのような、ミュージカルのようでもあり、パフォーミングアートでもある。ちょっと一言で表せる良い表現が浮かばないのですが、バラバラのように見えるものがすっと一つの物語に纏まるのが美・JAPONのすごいところです。


十二単を見たことがあっても、その着付けがどのようにされるかって聞いたことも見たこともなくないですか?

美・JAPONは十二単の着付けもショーの中でパフォーマンスすることも。伝統的な日本文化を伝えつつ、今度はこれからの時代にどのような可能性があるのかを探り続けています。


伝統を守るだけでなく、新しく創造するというコンセプトが自分にはとても響きました。



明日なくならなくても10年後にはないかもしれない、というのは

ここ最近でもっと短い時間の間に、すっと自分の前から姿を消してしまったものがあって、なんだかすごく後悔したんですよね。

ああしておけばよかった、こうしておけばよかった、と思うなら、今目の前にあるできることをやってみようと。ありきたりですがそう思いました。


ちゃんと、今目の前にあるものを見つめて、大切にしていけたら良いな、と。



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