読書メモ(人材業界の未来シナリオ)

■作者及び概要

作者は黒田真行。元リクルート。人材ビジネスの誕生から現在までの振り返ることで今後の方向性を示す羅針盤を人材業界に関わる人に提供することが目的。

■良かったインプットのメモ

・そもそも新卒一括採用の始まりは1879年に三菱が新規大学卒業者の定期採用をスタートさせたのが始まり。その後1920年の世界恐慌で就職難に陥り大学が就職課を設け学生をサポート。学業を疎かにして就活に励む学生が散見されたことから1928年に財閥系を筆頭に就活は卒業してから行うものとして取り決められた。つまり不況による就職難によってできた学業へ集中できない環境の解決策として新卒一括採用がスタート

・人材紹介の歴史は江戸時代の口入屋が始まり。当時は縁故採用が主で紹介者がいないと仕事に就けなかった。それを解決すべく求職者から身分保障費用をもらい、企業から紹介料をもらう両取りモデルの口入屋が広まった。田舎では人市と呼ばれるイベントがメインだった。

・最初の求人広告は明治時代。最初の求人は乳母の求人だった。その後は新聞広告に求人を乗せる方法がメインに。しかし1960年東京大学新聞(現リクルート)が「企業への招待」を発行。これを機に求人誌が生まれた。その後「ガテン」などセグメントに特化した媒体が誕生。求人媒体市場が出来上がった。

・2010年以降はマスに向けての広告ではなくSNSを活用した認知、ブランディングを基軸とした採用、縁故採用(リファラル採用)、オープンポジションでのダイレクトスカウトなどが主流に

・職業安定所(ハローワーク)の開所は1947年。それまでは市町村によって運営されていた公的職業紹介期間が国が管轄するものに

・日本に置ける人材紹介は当初は前課金制だった。(現リクルート)前課金の理由はセコムが常駐警備システムを前課金ではじめ成功したかららしい。金額は前受金14万、成功報酬で選考費7万及び月給の60%をもらうモデル。しかし前受金制度では決定しないクライアントも多いことから成果報酬に1992年に切り替え今に至る

・当初はRA、CAは両面型だったが効率化のため分業化するも不況時に両者に溝が生まれ、最終的にはRAは業界別、CAは技術系は業界別で事務系は職種別が最も効率がいいと今に至る。

・世界初の人材派遣会社はマンパワー(作ったのは弁護士2名)日本では1958年に労働者派遣法が制定され特定13種のみ許可されたが、1994年には港湾運送、製造業、警備、医療、建築を除き自由化。2008年のリーマンショック後法規制が強化されている。

・エグゼクティブリサーチのビジネスモデルは基本前課金。前課金全額もしくは1/3を受け取りヘッドハンティング。手数料相場は700~1000万ほど。エゴンゼンダーなど

・人材業界において長らく低価格帯のビジネスモデルが存在しない。理由として採用日以上に採用後の方が人件費が高くつく「人材」において失敗したくないという気持ちの方が強いからではという作者の考察。しかしソーシャルリクルーティングがこの領域で台頭してきた。

・人材業界のディスラプターとしてアグリゲーション型求人広告が出てきた。(主にindeed)特徴は①ネット上にある求人情報をまとめて観れることで求職者は楽に求人を探せる ②世界トップレベルのSEOにより検索でほぼ上位に表示される ③クリック課金モデルであり、安く採用できるケースが多い

・indeedが脅威とある大きな点として求職者との接点を根こそぎとっていくことが挙げられる。人材紹介会社や媒体への送客チャネルとしても存在することになり、競合でありながら生命線である求職者も握られてしまうという構造になっていく。

・退職者の退職理由は①評価不満型(63%)②業績悪化などの環境変化型(42%)③介護などのプライベート型④起業などの自己変革型 が挙げられる。これらを解決することが離職防止につながる

・有効な求職者のペルソナの描き方として①優秀な人材から人物像を想定する ②データを利用し求職者の流入経緯を知る ③採用担当者との深い議論④同業他社など業界の採用トレンド情報を知る 

・日本の中途採用におけるチャネルの割合は①ハローワーク40% ②縁故25% ③媒体25% ④人材紹介5% ⑤自社HPなど5%

・マネジメント層の採用に関してはアグリゲーションメディアの影響を受けにくく当面は変化しないことが予想されるがプレイヤー層に関しては非常に影響を受ける&ボリュームの多いゾーンであり業界自体が変わっていくことが予想される

・今後人材紹介会社にはより稀少性の高い人材の採用での貢献が求められ、そうでない人材の採用に関してはより安く手間をかけずといった要素が色濃く出てくることが想定される


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?