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市バスでのトラブルとビッグ・クエスチョン

今日、考えさせられる報道があったのでアンガー・マネジメントの視点で書いてみます。

車内で泣く子ども「静かにさせろ」怒鳴られる母親を手助けできず…後悔つづった投稿に反響、あなたはどう思いますか? | 河北新報オンライン (kahoku.news)

「仙台市バスの車内で、泣く子を連れた母親が高齢男性に「うるさい」と怒鳴られ、途中下車した-。目撃した女性は何もできず、本紙朝刊「声の交差点」に後悔の思いを寄せた。この投稿には共感や励ましを中心に、さまざまな反響が相次いだ。女性は「親子連れが肩身の狭い思いをしない社会になってほしい」と願う。」
(記事から引用)

実は私自身も市バスの中で中年女性に怒鳴られたことがあります(笑)。約10年くらい前、次男が生まれて間もないころ、当時私は長男対応のための育休中の出来事で長男が4歳ころです。

長男は良くしゃべる子だったので、バスの中でもずーっとしゃべりっぱなし。「声を小さくね」と言ってもテンション高めなこともあり、なかなか小さくならず、そうすると後部座席から中年女性が

「うるさいんだよ!!」

と…
ただただびっくりして、とっさに「すいません」
とだけ言って、目的地で降りました。

あの時も、今回の報道同様、周りの人は無反応。
当時は、怒鳴った中年女性に対してのみ腹が立ったものの、男性育休いわゆるイクメンというマイナー人間だったので「まぁそんな世の中だよな。」と思う程度で、このことはすっかり忘れてましたが、この記事で当時のことが思い起こされるとともに、子育てへの理解なんていっこも進んでないじゃないかとも感じました。
あわせて、怒鳴る人は母子でも父子でも怒鳴るので、報道にあるような「夫も一緒に外出している時は、嫌な目に遭うことは少ない」とも限らないといえます。また、報道にあるような高齢者は、保護者に対してというより、子供に対して怒っているように感じます。

年配者が主に小さい子に対して「怒鳴る」という行為は、小さき子=弱者に対して怒りのエネルギーを発したものと理解されます。すなわち、立場的に高い人(年配者)から低い人(子供、特に乳幼児)に向けられたものです。したがって、保護者の同伴者が女性(母親)であっても男性(父親)であってもあまり変わらないのでは?というのが私の実体験からです。

怒りは高いところから低いところへ流れます。

すなわち、怒りの矛先は保護者ではなく、子供に向いているということ。これは、未来の人材を大切に思わないという点で、保護者に怒りが向けられるよりも社会的には深刻な状況に思えます。

一方で…です。怒りの矛先が向けられたときに、とっさに怒り返すことを

カウンター・アンガー

といいます。
もし、この報道にあるお母さんがが連れていた子供の前で、カウンター・アンガーを行ったらどうでしょうか?しかも走行中の車内で。
もし、その結果ケンカになったり、言い争いの最中に転倒などしたら、子供に怪我を負わせてしまう可能性は十分あります。

この報道では「母親は涙声で男性に「すみません、次で降りますから」と言い、目的地より前とみられる停留所で下車した。」とあります。
どんなに腹立たしかったことか、また同時に悔しい思いをしたことは想像に難くありません。それでもなお、怒り返すことなく子供の安全第一を貫いたこのお母さんには、最大の賞賛を送りたいと思います。

このお母さんは、とっさの怒りに負けず、適切な行動を選ぶときのヒントとなる「ビッグ・クエスチョン」に沿った行動ができていたのです。

「ビッグ・クエスチョン」とは自分と周りにとって、長期的に考えて健康的な選択かどうかを自らに問うことで、最適な行動を目指すものです。

これは簡単なようで、とっさに行うのは実に難しいことです。

アンガー・マネジメントは、正義ではありません。
とくに公共交通機関でのマナー違反を見つけた場合などは、その違反を正すべきとおもって行動したとしても、それが最適な行動とは限りません。
「うるさい」と怒鳴った高齢男性を、その場でやり込めたり、とっちめたりすることは、ある意味では正しいかもしれません。
ただ、その場合子供に不利益があることも、この場合承知の上で行動しなければなりません。仮に、子供が怪我や心にトラウマなど負ったら、正義を貫いたことで取り返しのつかないことになり、結果的に後悔することだってあり得るのです。

ただ、今回救われたのは、その場に居合わせた方が、ご自分の葛藤とともにこうして新聞記事に投稿してくれたことです。投稿者の手嶋悠(はるか)さんには、こうして問題提起していただいたことに感謝です。
願わくば、これを機に子育てに優しい仙台になるように、ポジティブな怒りとしてのムーヴメントになればいいなと願っております。

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