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親の介護のため起業しました【資金編】

午後イチで銀行員との打ち合わせを終わらせた

そう、融資の相談なのだ

規模の大きい仕事を受注し、資金繰りをどうするのか。長期で借りるのか、短期で借りるのか、借りずに乗り切れるのか、判断に戸惑うところだ。

会社の規模に対して、受注する仕事が高額である、ぜいたくな悩みと言われるかもしれないが、財務を担当する人間にとっては困るのだよ。

この時もそうだった、軽トラックを一台だけ用意し、建設業の許可も取らず、個人事業主で小さな仕事を夫婦二人でコツコツとやっていく予定だった。

老夫婦が二人でコツコツって、なんて美しい姿なのだ、うっとりと考えていた。

六月末で前社を辞任し、七月中は前社の仕事の残務整理にあて、新事務所の立ち上げをしていた。

残務内容は、夫の担当していた現場の管理、完了した仕事の請求書発行、六月中に受けていた仕事の見積書作成、プランニング、得意先別に中元歳暮の贈答品の内容とお届け先、従業員の労務内容他多岐にわたっていた。

それらの業務については、月末に清算して個人事業主として請求書を提出する、そう取り決めていて請求をした。

なのだが請求先の社長である義兄にとっては、パート労働者として雇用するはずが正規の金額で請求が来たので驚いたようだ。義兄にとっては会社役員を辞任した弟が、時給800~1000円のアルバイトになるくらいにしか認識していなかったのだろう。亡き父の残した会社のために尽くすのが、義父の息子であり現社長の弟である夫の努めであると。

これは一部親戚も考えていたらしく「なぜ兄弟仲良く、義父の残した会社を盛り立てていけないのだ」と叱責してくる人もいた。夫の他の兄弟や近しい親戚、特に女性たちは夫を支持してくれた。

義兄社長が周囲に宣言したのだ「もう一切弟は会社とは関係が無い、弟の会社は自分が社長職の会社とは取引をしない、請求は暴利であるから呑めない」

会社の規模と仕事の規模と

一ヶ月の間に弊社への仕事の発注も来るようになっていた。夫の顧客は前会社へと辞退しても、信頼関係のある夫との取引を望んだのだ。

私は今まで何回か会社の運営で見通しを誤りそうになったが、一番の誤りはこれであった。発注される仕事の単価が、一桁違うのだ。夫の実力を見誤っていたのかも、過小評価していたつもりはないのだが。

弊社は建設業である、建設業の許可を取らずに受注できる金額の上限は建築一式工事で1500万円(税込み)である。

私は施主から発注される工事は、大きな工事でも数十万円が上限だろうと思っていた。前社には夫の甥が施工管理者としていたのだが、社長に内緒で仕事を紹介するのにも限界があった。

数百万円以上(中には1000万超えるものも)の工事を発注されても、請け負うだけの体力が無いのだ。即ち「お金が無い」のだ。

軽トラック一台で納められる現場ではなかったのだ

お金が無い! さあどうしよう

建設会社の取締役に対して、皆さんどのようなイメージがあるだろう。

年収1000万以上で、外車を数台所有して、年に数回の海外旅行

それは妄想でしかない、実際は会社の運転資金が足りないときは、月給の遅配が普通に行われる。業績が思わしくなく金融機関から借入するときに真っ先に削られるのは、役員報酬なのだ。

退職金らしきものも、建退共からの軽トラック一台分だけの金額だった。こんなものである、景気に左右される業界であるし、会計や法務に詳しい人間が経営をしているわけでは無いのだから。

地方銀行の地元支店長から融資のお誘いはあったのだが、「借金怖い」が家訓の給料取り家庭で育った身の私だ。融資は怖い、だが手持ち資金では足りない。

どうしよう!

かつて経理事務員として勤務していた会社のことを思い出していた

そうだ、国金に行ってみよう!

あの当時は「国民金融公庫」と呼ばれていたが、現在は「日本政策金融公庫」となっている。国の出先機関だから、阿漕なことはしないだろう!

ごめんなさい他の金融機関の皆さま、実家の家訓があれですので。現在は皆様のご厚情に感謝しております。

起業したいのならば日本政策金融公庫に相談

日本政策金融公庫の皆さんは、とても親切だった。怖いところだと勝手に思い込み、緊張しきっている私に色々と気遣いをして下さった。

放漫経営をしている事業主には厳しいのかもしれないが、懇切丁寧に制度のこと、経営のノウハウをレクチャーしてくれる。経営状況を客観的に見るための書式も揃っている。

融資を受けるつもりが無くとも、サイトの閲覧をしてみるのは起業しようとしている人には良いと思うのだ。

弊社は当時まだ個人事業主であったのだが、熟練技術者の起業支援の制度を使わせていただいた。すでに開業届を提出して数年たっていたが、融通を利かせてくれたり、懇切丁寧に相談に乗ってくれた。

こうして私たち夫婦は八桁超えの借金を背負い、建設業経営者の道を歩むことになったのだ。


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