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宇宙存在の餌食を培う! 魔曲「鉄格子黙示録」の真相/和嶋慎治・神々の椅子

人間椅子・和嶋慎治氏による、楽曲解説連載、題して「神々の椅子」! これを読めば、楽曲世界の背景がくっきりと……またはさらに複雑に……なるだろう。今回は、「鉄格子黙示録」! ぶっとんだ詞をたたきつける真意は、宇宙からの脅威にあった!?

文=和嶋慎治(人間椅子)

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天空からの使者

 高校三年生の秋の終わり頃でしたか冬の初めでしたか。その頃僕は受験ノイローゼのようなものになっていて、つまりは現実から逃げていたのですが、なんだかやたらと社会が怖い。世の中に出て行きたくない。ひいてはそのきっかけとなる大学受験にさっぱり気が進まない。現実逃避ですね。何かこの悶々とした世界から連れ出してくれる存在がいたなら‥‥宇宙人がいるならその姿を見せてくれ‥‥友人から借りた『UFOと宇宙』のバックナンバーを読み耽っては、空を眺めてばかりいたものです。

 自室にいた時のことです。勉強もせず小説を読んでいて、時間は午前2時頃だったでしょうか。窓から強烈な光が差し込んできて、はっとそちらを見やると、黄金色の未確認飛行物体が浮かんでいます。出来すぎなくらいのアダムスキー型をしていました。あっ、UFOだ! 思う間もなくそいつはぐんぐんとこちらに向かってきて、家の壁などものともせず部屋に飛び込んできました。驚きと、あまりの眩しさに目を開けていられないのとで、そのまま僕は意識を失ったように思います。ふと気づくと、僕は部屋の隅で膝を抱えたまま、ガタガタと震えていました。先ほどUFOを眺めていたのとは違う場所です。午前4時でした。何だったんだ‥‥夢なのか。いや、夢にしては圧倒的なまでの現実感だ。それにこの全身を貫く恐怖感といったら‥‥。午前2時から4時までの空白の2時間、いったい僕は何をしていたんだ。ただ寝ていたのか。それとも何かあったのか。思い出せない、思い出したくもない‥‥。

 頭がおかしくなったと思われるのも嫌なので、誰にも話しませんでした。父親のポツリと漏らした、「お前、この頃性格変わったな」という一言が印象に残っています。どうやら僕はより陰気になったようでした。それまですでに作詞作曲はしていたのですが、恋の歌は1小節も書く気がしなくなり、世界に終わりが近づいている、因縁と怨念が末代まで祟る、といった不吉な歌ばかり作るようになりました。受験勉強は、一切しなくなりました。

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