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21世紀にも生きる「ファラオの呪い」/初見健一・昭和こどもオカルト回顧録

王の眠りを妨げるものは呪われる……! 「ファラオの呪い」が、2021年の世界を震えさせた。懐かしくも恐ろしい怪奇譚を今、見つめ返す。

文=初見健一 #昭和こどもオカルト

頻発する事故はミイラ移送計画が原因か?

 この春、70年代オカルトブーム世代にとって、なんとも懐かしいフレーズがメディアに氾濫した。「ファラオの呪い」である。70年代なかばあたりに続々と刊行された「ピラミッドの謎」「王家の谷の探検」「ツタンカーメンのひみつ」など、エジプト関連の児童書を読み漁った元・オカルト少年少女たちは、忘れていた小学生時代の戦慄や興奮を久しぶりに思い出したのではないだろうか?

 今回の「ファラオの呪い」騒ぎのきっかけは、エジプトで2021年3月下旬に起こった事故の連鎖だった。
 世界中が注目する大騒動となったスエズ運河のコンテナ座礁、ソハグ県の列車衝突事故、そしてカイロで起こった10階建てビルの倒壊……。これらの惨事の原因は、翌月3日に予定されていた「ミイラの移送」にあるのでは? という噂が現地で広まったのだ。
 その日、老朽化した「エジプト考古学博物館」に展示されていたラムセス2世などのミイラ22体を、5キロほど離れた「エジプト文明博物館」に移送するパレードが大々的に行われることになっていた。この「王家の眠りを妨げる行為」が「ファラオの呪い」を発動させている、というわけだ。

 特にスエズ運河の座礁事故の処理には、なんとあのユリ・ゲラーまでが参戦した。TwitterやInstagramで「3月27日の午前と午後の11時11分にみんなで念力を送り、あの船を動かそう! マインドパワーのエネルギーで運河を開放しよう! 船が動くイメージを頭のなかで映像化してくれ! 私はみんなの力を信じている!」と世界の「同志」たちに呼びかけたのだ。

 そして27日当日、各国のメディアは半笑いで「超能力作戦は失敗した」と報道したものの、ユリ本人は「動いたぞ! ほんの少しだが船は動いた!」と報告。実際、ユリが指定した時刻にタンカーが「0.4度ほど南に動いた」のだそうだ。「タグボードで牽引作業をしていたのだからあたりまえ」という意見もあるようだが、ともかく「ファラオの呪い」という懐かしネタをめぐって、70年代オカルトの貴公子までが大活躍ということで、我々世代にとっては「懐かしオカルト祭り」のような様相を呈した騒動だった。

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