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【17日目】『個』とは何か(ジンセイのトリセツ)

◆『指の顔』実験

 【16日目】で紹介したとおり「命というものが何個あるか?」という疑問の答えは「一個」でした。この「一個の大きな命のかたまり」から、すべての命が「分割されて」存在している、というのが僕たちがこの地獄で『個』と呼んでいる命のカタチだ、という結論なんですが……
 では、その『個』と『個』はどういう関係性を持っているのか? というのが今日の話です。これにもわかりやすい(?)例えを用意しています。

 まず実験です。自分の手の指の爪に顔を書いてもらいます(実際に書かなくても、アタマで想像するだけでもいいです)。人差し指と中指にしましょうか。利き手の反対側の手がラクですね。表情は好きなようにどうぞ。

 さて、今この「指の顔」それぞれに、人格がやどりました。名前をつけてあげましょう。アルファとベータでも、サリーとマイクでも、ケンとラオウでもいいですよ。
 この二人、自分が「指」だとは当然知りません。それに自分が「人間」につながっているとはつゆほども気づいていません。それぞれが「自分」だと思っていて、となりにも似たような「顔」がある……そういう認識で生きています。

 僕たちから見ると、これらは当然「自分の指」です。二本ともです。だから僕らの意思で自由に動かせますし、この二人をつかった物語なんかも想像することができますよね。恋人どうしだったり、親友どうしだったり、宿敵どうしだったり。愛し合ったり、遊んだり、ケンカしたり。最後には仲良しになってくれると嬉しいですが、悲劇もまた味がありますよね。

 一方で……この「指自身」からすると、よもや自分が

『大きな人間の先っちょ』

だなんて思ってもいません。自分が、自分の意志で、自分のとなりにある別の顔と何らかの関係を持っている……と思っているでしょう。たとえその「関係」が、本体であるあなたの「想像」したストーリーであったとしても……です。


◆『大きな命のかたまり』から見た『個と個』

 僕が何を言いたいのか……分かってきました?
 僕たちが「大きな命のかたまり」が分割されて作られた『個』である、ということは、こういうふうな構造であることを意味しているんです。

 僕たちは隣にいる人(者)を

別の『個』

だと思っています。あなたと、昨日あなたがぶち殺したイニシャルG(ゴキ○リ)は、別の『個』ですよね……そりゃそうです。

 ですが……「大きな命のかたまり」の視点から見ると、なんと

あなたとイニシャルGはどちらも『自分の一部分』に見える

ということなんです!!

 まとめるとこうなります。
 「大きな命のかたまり」というものから僕たち「地獄世界の住人」を見ると、それらはあたかも

自分の指先

であるかのように、自分の意志通りに動く、自分の一部分だという認識になるんです。
 逆に、僕たち「地獄世界の住人」にとっては、となりにいる別の「個体」はやっぱり

①自分以外の個体が考えていること・感じていることを知覚できない
②「今」という時間の先を知覚できない

という【地獄のルール】にのっとった

「じゃんけんの相手」

としてしか認識できないわけです。その上でさらに、僕たちにはどこかにある「大きな命のかたまり」すらも、それが『あるのかないのかすらわからない』というレベルで、存在を認識できないんです。

 ……ね? 地獄でしょ? ここは地獄なんです。


◆命の構造を『思い出す』とき

 こういう「命の本当の構造」のようなものは、おそらく僕たちが【天国】に戻ったあと少しして「思い出す」のではないかと思っています。
 【6日目】でも書きましたが、僕たちは【地獄】のルールに従って生きて、そのまま何も分からずに死んでしまうので、天国に戻るための「案内」のようなものがあるんでしたね。そして天国に戻ったあと、少しずつこういう「システム」を思い出すんだろうな、と僕は考えています。もしかしたら学校のようなものがあるかもしれませんね。

 なぜそう考えているかというと、そうやって「思い出す」タイミングがないと、この「一切皆苦」である苦しいことしか起こらない【地獄】に

「また戻ろう!」

なんて思うわけがないからです。天国でこういう「命というシステム」を「思い出す」から、苦しい地獄にわざわざ行って何かするという『用事』が再度できるんだろうと想像しています。

 それで……そういう『個』が、地獄の生き物の数だけ今ここにいるんです。そしてそれらが全部

『大きな命のかたまりの先っちょ』

という構造をしていることになります。この『大きな命のかたまり』とは一体何なんでしょうか? 次はその秘密にせまっていきましょう。


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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)