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「誰ともわかり合えない」という砂漠を潤す物語たち


自分の中に確かに存在しているのに、うまく言語化できない気持ちがたくさんある。
言葉として形作ることができないまま、そう感じたという事実だけが心に残ってしまうのは、ちょっとさみしい。
かっこよくいうと、砂漠に1人取り残されているみたい。
だけど時々、思いがけないところで形作られたその気持ちに出会える時がある。私ではない誰かのエピソードとして、誰かが抱いた気持ちとして表現される瞬間がとても愛おしいから、私は物語を愛している。

そう考えるに至ったのは、違国日記のあるエピソードを読んでからだ。


‥物語が「必要」ですか なぜ?
違国日記 4巻 Page.18

これ、全然この回のメインエピソードではないのにすごく心に刺さった。"物語が必要"という言葉はとてもしっくりくるけど、なぜ?と問うた塔野のセリフがあったことで、それに疑問を覚える人がいるんだと気づけたからだと思う。
本を読まないと人生を損している、とかそう言うんじゃなくて、何故それを必要としたのか?と理解しようとする心が好ましかったのもある。

槙生が物語を必要とした理由は、作品の中に少しだけ書いてある。じゃあ、私に物語が必要だった理由はなんだったっけ。好きだから読んでいるだけじゃなくて、もっと深い"なぜ"があることに気がついたことで、言語化できないでいた気持ちに少しだけ光がさす。

そうやっていろんな価値観を自分の中に取り入れながら、30歳を超えてなお成長するための要素をくれるから、物語が好きだし、必要なのかもしれない。


今日、2月8日に違国日記は最新10巻を発売した。
ようやく物語のスタートラインに立ったような、歩んできた道のりにたどり着いたような、読み応えのある一冊だった。

Twitterにも書いたけど、人より早く大人にならなければならないことに葛藤する朝の苦しさと悲しみが伝播して何故か私も泣いている。
ここから、2人や周りの人たちがどんな風に生きていくのか、引き続き読み続けたい。





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