読書記録2:これが生活なのか知らん 小原晩
色々な書店で平積みされていて、とても気になっていた本。
私は結構表紙で本を買うこともある。CDやレコードと同じ、いわゆるジャケ買い。どちらも同じワクワク感はあるものの、なんだかちょびっと違う気持ちのようにも感じる。
タイトル、著者名、帯コメント。
そして真ん中にいるどこか遠い国にいるような女性の絵。
気になってはいたものの、金欠で「しばらく新しい本は控える」と夫にも宣言してしまった手前、なかなか購入に踏み切れなかった。
今なぜ手元にあるのかというと、たまたま好みの本屋さんに出会ったから。
とある展示会で早稲田を訪れ、知人と飲む予定の四ツ谷まで歩こうと立ち止まって地図を開こうとした時。
左側に直感で「ここは好き」と感じる本屋を見つけた。
本屋という場所がそもそも大好きなので、好きな本屋に出会うと絶対にそこで本を買いたくなる。
そしてこの本が入り口の新刊棚にやはり平積みされていたのだ。
ゆっくり、涼みながら中を一周し、入り口側に戻って本を手に取る。
店に入った時から、すでに心は決まっていた。
(もう一冊「マイ・フレンド: 高田渡青春日記1966ー1969」も買った
、その感想文はまた今度に)
2冊の本を抱えながら、早稲田から四ツ谷まで汗だくで歩く。
知人との待ち合わせまでまだ時間があったので、安い喫茶店に入りページをめくっていく。
自分にとって、特に大学時代なんかは思い出すと「ワーーーーーっ!」となるくらい恥ずかしくなることもある。考えも、服装も、講義をサボったことも、恋愛関係も、友人関係も、お酒の失敗も。
汚く、楽しく、くだらない。で、今思えばほんのちょっとだけ美しかった(こう最後に付け加えるのは、思い出を美化しているようで実際とても恥ずかしいが、もう戻れないなにかを思う時、結構ひと匙の美しさを感じる時がある)。
綺麗なものだけに塗り替えるのではなく、郷愁に浸るのではなく、「そんな日もあった」とただ思い返す。
今まで、今も、生活している自分の日々を思い返す。
それがとても心地いい。
喫茶店の冷房に、火照っていた体がだんだん冷やされてくる。
会ったことのない小原さんの話を読んで、どこか自分の中の何かに置き換わって浮かんでくる不思議な感覚がした。
私は結構小さなことでもくよくよ悩んでしまう性格。
過去のことを思い出す時も、楽しかったなよりも「はぁ〜」っとため息をつくようなことを思い出してしまうことが多い。
でもこの本を読んで、明るいことも確かにそこにあった、と思い出すことができたと思う。
小原さんのユーモアのある文章もとても好き。コロコロと読み進められてしまう。りんごちゃんとめろんちゃんとの共同生活の話がとても印象的だった。
食べ物の描写が時折出てくるところもとても好きだ。
なんだかとてもゆったりとした気持ちになって喫茶店を出た。知人と合流してたらふく食べ、飲んで、話して、久しぶりに二軒はしごをして帰った。
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