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「白線」
「私は大阪の風が好きだ。」
街ゆく酔っ払いからのアルコールの匂い、たこやき屋の焦げ付くような匂い、劇場から聞こえる笑い声、その全てが私は愛おしい。
私がいる故郷(まち)東京は、何処か冷たく全てが無意味に感じられた、帰路の小学生の群れ、イヤホンから流れる音楽、自動ドアが開いた時のパチンコ屋の音、その全てが好きになれなかった。
しかし、どこにいても、残酷に時は私の焦燥感、葛藤を置いて過ぎ去ってしまう。
私は定刻を告げるチャイムをよそに駅へと歩き出す。
手には大阪行きのチケットを握りしめ、つかの間の休息へと足を伸ばすのだ。
駅へと急ぐ人の群れは皆どこか急いでいて忙しない感じがした。
私は駅の構内を歩き、急ぎ足のサラリーマンを横目にホームへと向かう。
ホームに付き新幹線を待っていると隣に1人の少女がいる事に気がついた。
少女はどこか憂いている表情で、しかし頑なに何かを決心した顔をしていた。
私はその少女の顔に何かを感じ惹かれていたのかもしれない。
じっとその少女の顔を見つめていると、少女がこちらに気づき視線を返してきた、束の間の沈黙。
その後口を開いた少女はこう言った、「白線の内側って、どっちか知ってる?」と…
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