比較
春の始まりの夜と夏の終わりの夜の空気の柔らかさは素晴らしい。
風が体にふんわりと纏わりついてきて、このまま歩いてどこにでも行けるような、自由で香り高い夜だ。
そう思うと、人生は比較の上に成り立っている。
生きている限りは、大なり小なり、いろんなことが降りかかってきて、現実に足をとられて息もできない。
それでも、死ぬまでにまたこんな夜がめぐってくるならば、
つまらない災難は、この夜をより際立たせるためのお膳立てでしかないならば、
どんな災難も我慢したっていいと思えるほど、この日のために生まれてきたと思えるような
冬が終わりを告げる夜。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?