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明け方まで電話をしたらアドレナリンが出たので鉄砲持って山へ行った

☞今朝の彼女は少し変だった


今朝は4時過ぎまでビデオ通話。ビデオ通話って一気に都会との距離が縮まる。あれ?ここは中目黒?頬を刺す朝の山手通りはどちら?すっかり自分が山にいることを忘れる。お手軽に帰省した気分にトリップできるのは最高。それから仮眠しようかと思ったけれど、なんだか寝付けない。なんだか胸騒ぎがする。駄目元で鉄砲を持って見回りに行ったのは5時前。朝撃ちがしたいという夢は今日もダメだった。出てくるときには鉄砲がなく、鉄砲があるときには出てこない。気づけば通勤の車も走り出し、世界はすっかり朝だった。そのまま仕掛けているわさ(罠)の見回りへ。最後のスポットへ着いたのは6時15分だった。そこで山の中への道のカーブを曲がった瞬間、山の上から鹿が焦ったように飛び出してきた。ここは今月で2頭目だからやっぱり濃いなと再確認。鹿は雄鹿で時期に似合わず肉付きがよかった。10月のおんた(オスシカのこと)は飲まず食わずで交尾のためにめんた(メスシカ)を追い回す。このおんたもフェロモンで臭かったけれど。鹿というよりカモシカみたいのような風格だった。

同じ獣道でシシ(イノシシ)がかかったことがあった。そのときのシシは私が行ったときには平成初期に小学生の間で大流行した流行った垂れたパンダ彷彿とさせるかのように、ぐでーんと腹ばいになっていた。遠目から見えた後ろ姿から私は戦慄した。ぐでんと伸びきっているシシの隣にはこんもり盛られた昨日までなかった土の大きな山があった。私は抜き足差し足で砂利ひとつならさないようそーっとシシから目をそらさず、軽トラまで一目散に戻って応援を呼んだ。
そのとき運が悪いことに銃は修理中だった。手に入れて初めての射撃練習中、いきなり銃が固まり動かなくなり、初撃ちも中途半端に鉄砲屋に里帰り入院をしていたから、人を呼ぶしかなかった。快く応じてくれた?鉄砲撃ちのじいさんと、好意で来てくれたお手伝い部隊、私を含む5名が揃ったあと、人数の多さと銃があることが私を安心させ、向かう足音と声に出ていたのだろう。2回目の現場は、遠目からでも怒り心頭のイノシシが戦闘モードでふんふん言っているのがよーくわかった。

『お前らなんなんだよ。痛えじゃねえかよ、ふざけんな。まとめてやってやろうか』

イノシシの態度は強気そのもので、わさにかかっているのだから、動ける範囲は限られているのに、その直径2メートルもない中で反動をつけて突いてこようとしていた。それに臆することなく鉄砲撃ちのじいさんがギリギリまで近づき、「近すぎる!危ないぞ」の声に対して「目が悪くて見えん。ようぶつかってくるな」といつもと全く変わらない声のトーンだった。
私はそのとき恐ろしくて近づけなかった。
『ドン』のあとは2秒くらいして『バタ』
ドンバタのときだけ、今でも若干スローモーションになるけれど、大体2秒と思う。血抜きからは私の仕事だと、鉄砲撃ちのじいさんは「用事があるから」と帰っていった。

イノシシの強さと怖さを見た、そんな場所でかかったのが鹿だったから、おおよそ60キロはありそうな立派な鹿には申し訳ないが、それでも(シシじゃなくてよかった)という安堵感と、自分の読みは当たっていたという達成感の方が強かった。これでも地味に場数を踏んできたのだと思った。なんだか感慨深い朝だった。

そのあと鹿は撃ったんだけど、不思議なことに、命を留めるって鉄砲を使っても凄く疲れる一方、アドレナリンが出てくる。これは本能だと思う私は感じている。私たちの祖先が狩りをして暮らしていたころ、マンモスが獲れたらお祝いしたんじゃないだろうか。今回仕留めたオスシカは食べなかった。この時期の雄鹿をもしも鹿を食べることが初めてだという人に食べさせたらトラウマになると思っている。料理の腕だけじゃなくて、何でも旬というものがある。今回は有害鳥獣駆除という名目で獲ったから、食べる食べないではない問題があるわけで。そこを話すと長くなる。バブ、今朝はいい朝だね。たまには朝までコースもいいかも

☞そんなことを呟きながら彼女は昼寝していたけれど、不思議なものでそういうときはあんまり眠れないみたい。本能的に生きていると、体は都合よく采配してくれる。睡眠ってストレスが大いに関係してるって思う。いつもいつも7時間以上眠らなくちゃいけない、みたいなのは全くないみたい。でも嫌なことがあると眠くなって、俗にいう寝逃げができる。これも本能だと思う。僕はいつも結構な時間寝るけれど、寝たいから寝ているだけで〇〇しなくちゃいけない、みたいなのってとても不自由だよね。きっと何事もぼちぼちでOK。

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