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あなたに特別な一冊を贈りたい

本が好きです。自分の人生の多くは言葉で彩られ、そんな自分を創ってくれたのは読書だと思ってきました。

友人たちの中で私ほど本が好きな人は多くなく、でもだからこそおすすめの本を聞かれた時に、いつも頭を悩ませてしまいます。

普段は本を読まない人ならなおのこと、あなたの人生に残る一冊を、と思ってしまうからです。


読書好きの人に本を贈るのは、センスは問われるかもしれませんがそこまで難しく考えません。

その人はその人なりの本棚をもう持っているし、今までに築いてきた本との関わり方があるはずだから。私が選んだ本がもし趣向に合わなかったとしても、それはその人の読書という世界の一画にすぎません。そして、お互いにああだこうだと感想を言い合っても、私がその人の読書世界におじゃましているだけなんです。

この人はこういう作家さんが好きなんだな、じゃあ似た文体のこの作家さんとか、このジャンルもきっと好きだろうな。あるいは、いつも読んでいるのはこういう本だから、あえて違う作風をおすすめしてみようかな。とか。

私はあくまで彼ら彼女らの世界の中を彩る一色でしかないのです。



でも、普段本を読まない人に対しては、私が彼らの読書世界を創ってしまうことになりかねません

私がここでチョイスを間違ったら、一定期間またその人は本に触れなくなってしまうのだろうな。そう思うと、相手にとっては気軽な話題作りだったかもしれないその言葉に対して、急になんとも言えない使命感を覚えてしまったりするのが本好きの悪い癖です。

私の文章が好きと言ってくれる人とは、好きな本の趣味もあうのではないかと思っています。少なからず私の書くものは読んできたものの影響をかなり受けていると思うし、文章の雰囲気や言葉選びの好きな作家さんをよく選んでしまうからです。

また、その人の性格や人となりを知っていると選びやすい。今までの経験から、こういう話はきっと好きだろうな。好きな音楽の雰囲気と、この話の雰囲気は似ているかもしれない、とか。あるいは、今相手が悩んでいることと、この本の内容はリンクするかな、とか。そういう想像を膨らますことができるからです。


全く知らない人に対しては、もうほとんどお手上げと言っても過言ではありません。本が好きな人なら、全員が好きな文章なんてあるわけがないと知っています。でも、何でもいいからおすすめを教えて、とおすすめの本を知りたいという興味で聞いてくる人ほど、「自分が面白いと感じられる本」という答えを求めているように思うのです。

そうなったら、自分の価値観をゴリ押しするしかなくなってしまいます。それか、その年の本屋大賞でも読んでもらってみたらいいでしょう。こんなおすすめの仕方のなんと悔しいことか。本好き失格です。



まだよく知らない人に本をおすすめすることは難しいことです。でもだからこそ、友人や大切な人には本を贈れる人でありたいとも思います。

そういう気持ちで向き合うことは、私の本の世界も、そして人との向き合い方も、より濃いものに変えてくれると思うから。

その人の読書の世界に、いつでもお邪魔できるような本好きでありたいものです。


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