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眼は心の窓、身体は精神の鏡

身体の調整は大切です。とくにダンサーや身体を資本としている人は特に身体の変化や状況に敏感なので、必要以上に大切に守らなければいけないと思います。

ですが、現在自分が40歳を過ぎ、運の良いことにまだダンサーとして舞台に立つ機会があるおじさんの言っていることです。何が言いたいかと言うと、若い人はこれを「年行って終わりに近い人の言うことだろ」って流しても良いし、「明日は我が身」で受け取ってもいいでしょう。これは人それぞれの選択肢です。

なぜこう言いたいのか、それは若い頃は無茶をして体がボロボロになると学ぶことも多いから。回復が早い段階では、『調整よりも挑戦が大事』な時期でもあるでしょう。ですから、ダンサーのみなさんがプロを目指しているのに、調整が大事だから気を付けろと言い続けるのは難しいのです。勿論両方できるといいのでしょうが、若い頃は遊びに時間を割きたいだろうし、それもいいと個人的には思います。


自分の中での身体の行程段階はこうです。

・生まれたときは柔らかい、だからまずは筋肉トレーニングなどでしっかりと固め(土台を作る)、ガムシャラに挑戦をするべき。

・20歳中盤ぐらいになれば土台はしっかりしてきているはずなので、がむしゃらに加えて精神を一度、安定させる。

・30歳終盤ぐらいになると、ある程度の割合で蓄積(慢性化)された疲労や痛みに回復力が追いつかなくなりつつあるので、調整に入ったほうがいい。という具合です。

個人差は必ずありますが、身体を資本としている人でも、動いているから健康というわけでもなく、『歪みを歪みだと認識しない』と取り返しのつかない状態にまで行ってしまうこともあるでしょう。


今回のコロナ騒動で行動範囲が制御されたり、舞台や仕事がなくなり、身体も動かなくなったときに、一番影響してくるのが精神と姿勢、内臓と衰え。一番と書きつつ4つほど出しましたが、これらはほぼつながっています。

ダンサーは、動きで表現したり魅せたりするもの。まず、動けることが制御され、トレーニングがいつもよりはできない。こうなると筋力が衰える、とまずは考えがちですが、なにより精神がきつくなります。デジタルなどで、違う形で表現はできるでしょうが、舞台で観客に直接対話をする力は労力が半端ない変わりに、『Give and Take』も飛躍的に上がります。つまり、我々もエネルギーをもらっているのです。

そして精神がやられていくと、身体で表現したり敏感な人は、その精神状態が姿勢で現れてきます。『眼は心の窓、身体は精神の鏡』、姿勢は筋力だけでなく、そのモチベーション(気をつけているかどうか)が鍵となります。

最後に、内臓なのですが、これが少し歳を取るからの衰えかもしれませんが、落ち込んでいく内臓下垂による重量感。消化を助ける呼吸とポンプの運動、呼吸も一つの運動という言葉を耳にしたときに、そう考えたことがなかった自分は何か納得が行った気がしました。確かに気功でも、内臓を上にあげると考えながら動くものもあるのですが、そう教えてくれたのが今の師匠だけで、勝手に動きに身体が反応するのではないと思った瞬間でした。

要約すると、精神と身体ははっきりと繋がっているのだと確信し、自分の間違いを肯定し、このままではダメだと認めたときに初めて調整が大事なのだと思ったわけです。


調整には色々な種類がありますが、まず最初にオススメするのがやはりストレッチです。慢性化している疲労は姿勢を落ち込ませる、つまり縮こませているという状態だと考えれば良いと思います。それをまずは伸ばすことが大切です。さらに付け加えることができるのならば、ただ伸ばすのではなくどこがどう伸びているのかを知りながら行うことです。

そして次が『自分の痛み』を知るということ。人はそれぞれが慢性の痛みや良くも悪くも蓄積した癖などがあります。それを知り、改善に踏み出すと体は必ず反応してくれます。

最後は勿論持続性、つまりは続けるという精神が大事だと思います。最初は慢性化している癖や痛みは一時的なものよりも強力で、ダンサーは特に無駄な動きも取り入れてきた無茶(挑戦)もあるので尚更です。しかし、その挑戦をしてきたからこそ、この調整が大切なのだと気がつけることでしょう。


現在、少し緩和された自粛により、パリで舞台を行いスペインでも舞台に立つことができました。やく5ヶ月ぶりの仕事といっても過言ではないかもしれません。そのために調整を行なってきて半月ほどですが、体がきちんと使えると姿勢が良くなり、精神も安定するのだと感じています。

もしも今、不安や心配だらけでどうしようもないと感じているのであれば、まずは鏡で自分の姿勢をみてみてください。現状打破の気持ちで真剣に姿勢の調整だけでも行えば、精神も安定して乗り越えられるかもしれませんよ。

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