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海外(カンボジア)ビジネスで大切な事は全てサーシャに教わった⑥OODA

プノンペンで目的地まで歩く人はそんなに多くない。
バイクか車、あとはGrab、PassAppといった配車アプリでトゥクトゥクかタクシーを拾う感じだ。
数年前からJICAの支援で運行された路線バスもだんだん乗られるようになってきた。

White River 2 HostelからBeijing Barまでは遠くないので僕は歩いていくことにした。

18時ちょうどにつくと、すでにサーシャはカウンターに座っていた。

「さずが日本人ね、ジャストオンタイム」

「いや、普通日本人は5分前に着くんだよ、オンタイムだと何かあったとき遅刻しちゃうからね・・・」

「ふーん、それで、しっかり考えられた?」

「うん、たぶん。でもちょっと聞いていい?サーシャは何者なの?孤児院で短期でアルバイトしているだけでしょ?なんでそんな人がこんな適当なデザイナーの面倒なんてみてるわけ?」

その質問には答えず、
「デザイナーではなく経営者として自覚すること」
とだけ言い放ち、アンコールビールを頼んだ。
僕もビールを頼み、サーシャが何か言うのを待った。

「では、早速聴こうかな、あなたの考え」
僕はノートパソコンを開き、さっきまとめたものをサーシャに見せながら説明した。

まず、来年の目標売上は30万ドル、粗利は10万ドルと答えた。
サーシャは少し沈黙し、ビールを一口飲んだ。

「まあ初めてだからまずはそれくらいでいいわ。
まずは決めることが大事なの。では、それを達成するために何をするの?」

僕は計画表を見せた。

振り分けたABCクライアントのうち、僕が担当するのはAクライアント
Bクライアントを新しく採用するスタッフを教育しながら引き継いでいく
Cクライアントはオーダーがくるまでフォローしないで、きたらスタッフに振る

これからの僕の仕事は、新規開拓とスタッフの教育、新規事業。

新規事業は、広告代理店のようなもので、サーシャが教えてくれたように、デザインに付随するものをうちでできるようにする。
具体的には、
印刷、看板制作、屋外広告(OOH)、Webまわり、AR、VR、内装、イベント設営など。

それをやり、一年間で目標を達成したい。

「だいたいわかったわ。では、売上の根拠は?」

「そうなんだよ、これを考えてわかったんだけど、デザイン業務の粗利率はほぼ100%なんだよ、だから売上5万ドルで粗利も5万ドル。だけど広告代理店の粗利はせいぜい20%だから、粗利目標の半分の5万ドルを稼ぐには25万ドルの売上が必要で、デザインとあわせると30万ドルになる」

「それでいいの、大事なのはいかに粗利益を上げるか、なの。粗利からしか給料出ないし、残らない。広告代理業の粗利をあげていく方法はある程度軌道に乗ったら話すことにするわ」

「わかった。」
僕はサーシャにバカにされるんじゃないかとか、激しく修正されるんじゃないかと、内心ビクビクしていたが、とりあえずホッとした。

「経営者の仕事は決めること」
サーシャは言った。
「これを決めたことでムハンマドははじめて経営者の仲間入り、乾杯」
といいグラスを傾け、ぬるいビールで乾杯した。

「決めたら実行すること、そして実行しながらOODAをまわしていくの」

「OODA?」

「Observation(観察する)、カンボジアの発展は目覚ましいものがあるでしょ、だから一年後は今想像しているのとだいぶ違う環境になっているかも知れない。市場、競合、社内、法律など、常にアンテナを張って状況を把握すること。

Orientation(方向性を考える)一度決めた計画は、変えていいの。常に状況は変わっているから。当初プノンペンにきたときにこんなにビルが乱立してるの想像できた?そのときといまでは環境が違うから当然、やり方も変わってくる。配車アプリなんかも急に浸透したでしょ?あなたがトゥクトゥクドライバーだったら乗り物、価格設定、単価すべて変えないと生き残れなかった。

Decision(決める)
ここでもあなたの大事な仕事、Orientationで練った内容をなにをやって、なにをやらないか決断すること。

Action(やる)
そして、当然、実行なくして実りなし。

これを繰り返していくことが次のステップよ」

僕はいままでただ漠然と毎日を過ごしていたんだな。起業するのは簡単だけど、会社を継続させて利益を出していくことはやはり大変なんだな。
そう思うと、この店が20年もやっているの、すごいな。

僕たちは、それからこの店でチキンウイング、サラダなど軽く食事してから別れた。

冗談やプノンペンで最近起こったことなんかを話したと思うけど、明日からやることで頭がいっぱいであまり覚えていない。

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