妻の葬送記を小説化しました。死んで20年になります。私も老いました。気がついたら87歳になっていました。コロナもやって来ました。先に何が来るか分かりません。だから疎開を体験した貧…
¥110
- 運営しているクリエイター
#小説
小説「芙美湖葬送」順不同・読み切り版
4医師は時間の問題といった
間隔が空きました。欲張って、年寄りの冷や水で,同時並行で「芙美湖葬送」「死ぬ準備」「童女トン」など三本を掲載しているので、いささかへばってしまいました。だめですね。老人はコンロールが利かない。前後ダブっていることもある。でも妻が死んで今年で20年、墓標だと思って書き続けます。料金は100円になっているけど無料です。月ぎめにしたい。でも老人だからクレジットがない。デビッ
小説「芙美湖葬送」読み切り版
明け方に気温が下がり始めた。
霧が病院全体を覆い始めた。乳白色の霧が、汚れた病院の外壁を少しだけ白く塗り替えている。私が立っている最上階の病棟洗面所からは、普段は、付属看護学校棟が見えるのに、その朝は、何も見えなかった。 かすかに建物の存在を感ずるだけである。昨夜はあれほどハッキリ見えた駐車場の車も、霧の中で霞んでいる。その中の一台で、娘の琳子夫婦が仮眠を取っているだろう。昨夜九時頃、医師と長
小説「芙美湖葬送」読み切り版
心静かに死なせたかった
昨夜も、主治医とは、二回目の器官挿管をどうするかについて話し合った。肺炎菌や、緑膿菌の他に、さまざま細菌が肺を侵しているから、もう自己呼吸が出来ない。器官挿管して、人工的に酸素を送るしかない。
しかしそれも一週間が限度である。
挿管と接触した部分に炎症が起きるから。一週間したら抜管して、新しいパイプと取り替えなければならない。その時にまた苦しむ。その苦しみを見てい