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シュールな短編小説

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ファンタジー、そして時にはシュールな短編集。
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2021年3月の記事一覧

秋のリサイタル

 恒例の「落ち葉のリサイタル」が今年も開催される。ヒラリー・ハーンの奏でるヴァイオリンの…

むぅにぃ
3年前
2

岩山をひたすら登る

 険しい岩山を、わたしは必死に登っていく。  そんなわたしを樹木希林は、「だらしないっ」…

むぅにぃ
3年前
3

お金の使い方を学ぶ

 周りからいつも、「お前は、お金の使い方が下手だ」と言われる。  そうかもしれない。明日…

むぅにぃ
3年前
1

喉から手が出るほど

 志茂田ともるに呼び出されて、喫茶店へと向かう。電話の様子から、どうもただ事ではなさそう…

むぅにぃ
3年前
3

πを計算するおじいさん

 最近、そのおじいさんとよく出会う。ぼさぼさに伸ばした髪も、胸もとまで届きそうな髭も真っ…

むぅにぃ
3年前
6

赤ちゃんを押し付けられる

 フード・コートでハンバーガー・セットを食べていと、そこへベビー・カーを押した母親がやっ…

むぅにぃ
3年前
4

近所にトンネルができる

 近所にトンネルができていた。もともと空き地だった所で、マンションでも建つのかなと予想していた。まさか、トンネルとは意外である。  入り口に、「高さ1m以上の車両は通行禁止」と標識があった。 「それじゃあ、自転車だって入れやしない」わたしは呆れる。歩行者も、子供ならともかく、大人では屈まなくてはならない。  中を覗いてみると、繁華街のようにネオンは輝き、がやがやと喧噪が聞こえる。 「トンネルなんかで、いったい何をやってるんだろう」  不思議に思って、中へ入ってみた。  つい

天ぷらそばをめぐる冒険

 ここは駅前のそば屋。さっき頼んだ天ぷらそばが、ちょうど運ばれてくる。  割り箸を取って…

むぅにぃ
3年前
2

橋を渡りかける

 月夜の晩、あぜ道を1人でとぼとぼと歩いていた。周囲の畑に植えられているのは真っ白なヒガ…

むぅにぃ
3年前
6

フリーマーケット

 公園でフリーマーケットをやっていた。 「『自由の市場』かぁ。面白そうだから、ちょっと寄…

むぅにぃ
3年前
3

カボチャの歌

 お椀を伏せたような真っ黒な山がそびえ並ぶ。突き出した岩も落ちている石も、ぼしょぼしょと…

むぅにぃ
3年前
1

親父ギャグがはやる

 携帯に着信があった。友人の桑田孝夫からだ。 「はい、もしもし」 「あ、おれだけど。ちょっ…

むぅにぃ
3年前
2

情けは人のためならず

 歩行者用信号が点滅を始めた。おばあさんはまだ、歩道の真ん中だ。腰が曲がり、杖をついてい…

むぅにぃ
3年前
2

教習所に通う

「運転免許くらい持っていないと、何かと不便ですよ、むぅにぃ君」そう、志茂田ともるに言われる。 「免許なんか取ったって、どうせペーパー・ドライバーだしなぁ」わたしは渋った。もとより運動神経の鈍さには絶対の自信があり、1人で公道へなんて出たら走る凶器になりかねない、と不安なのだ。 「運転はともかく、社会人としてのステータスとして必要なのですよ。かく言うわたしだって、ここ何年もハンドルを握ったことがありません。ですが、レンタル・ショップの会員になるにも、役場で証明書を発行してもらう