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シュールな短編小説

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ファンタジー、そして時にはシュールな短編集。
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2021年2月の記事一覧

本当の真夜中

 図書館で、「宵っぱりよ、これが真夜中だ」という本をたまたま手に取った。  それによれば…

むぅにぃ
3年前
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ギザ十探し

 桑田孝夫の家に遊びに行く。  玄関先から呼ぶと、奥の自分の部屋から返事がした。 「おう、…

むぅにぃ
3年前
2

親友から引っ越しのハガキが届く

 中学時代に仲のよかった友達から、懐かしい便りが届いた。  〔お久し、むぅにぃ。ずいぶん…

むぅにぃ
3年前
3

蛇口

 子供の頃、ほんのイタズラ心から、とんでもない事件を起こしたことがあった。人生最大の失敗…

むぅにぃ
3年前
3

新発売の肉まん

 日が沈むと、涼しい風が吹き始める今日この頃。暑いうちは敬遠していたほかほかの食べ物に食…

むぅにぃ
3年前
3

大理石の中の壮大なロマン

 いつも人通りの激しい駅ビルは、よく見れば色々と発見がある。  たとえば、インフォメーシ…

むぅにぃ
3年前
3

怪しい人物に話しかけられる

 桑田孝夫とオープン・カフェでサンドイッチを食べている。  この時期、日差しも和らいで、外の風がとても気持ちがよかった。 「知ってるか? サンドイッチってなあ、サンドウィッチ伯爵が発明した食いもんなんだぜ」ハムサンドをほおばりながら桑田がうんちくを披露する。 「実はそれ、俗説らしいよ。サンドイッチそのものは、もっと古くからあったっていうしね。伯爵の子孫が、アメリカでサンドイッチ専門店を経営してるっ、ていうのは聞いたことあるけど」 「まじかっ」出鼻をくじかれて、意気消沈する桑田

真夜中の恐竜

 わたしの住む街で、近ごろ妙な噂が広がっていた。  人が寝静まった真夜中に、アパトサウル…

むぅにぃ
3年前
2

柿の木に登る

 庭でバドミントンをしていたら、シャトルが柿の木の枝に引っかかってしまった。 「あれくら…

むぅにぃ
3年前
2

オニと大仏

 由比ヶ浜の海沿いにある、オールドファッションな喫茶店で鎌倉タコライスを食べ、浜辺を歩い…

むぅにぃ
3年前
3

コンビニに入る

 幼いわたしの手を引いて、父がふらっと入った先はコンビニだった。 「パパ、何か買うの?」…

むぅにぃ
3年前
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闇に潜むカナリア

 ショッピング・モールへ寄った帰り、夕立に降られてしまった。 「あー、降るんなら、もっと…

むぅにぃ
3年前
4

売り切れの札がかかる

 デパートの屋上で開かれているビヤガーデンも、今日が最終日。  中谷美枝子、桑田孝夫、志…

むぅにぃ
3年前
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かかし

 幼なじみの桑田孝夫と、村へ続く山道を歩いている。 「早く帰らないと、日が暮れちゃうね」辺りを見回しながらわたしは言った。  村まではざっと5キロほど。へんぴな田舎なので、人の家どころか街灯の1本も立っていない。夜ともなれば、鼻をつままれてもわからない闇に包まれる。 「大丈夫だって。天狗山のてっぺんに、いまやっと太陽が触れたところじゃねえか。村に夕日が射す風景を見ながらの到着だろうよ」  笹川隧道に差しかかる。50メートルばかりのトンネルだったが、手掘りの跡が妙に生々しく、