橋本 健史

身長・体重・年齢:どうでもいい。東京都出身。大学卒業後、京都映画塾、北京電影学院、全国…

橋本 健史

身長・体重・年齢:どうでもいい。東京都出身。大学卒業後、京都映画塾、北京電影学院、全国紙記者を経て、札幌を拠点に映画制作会社設立を目指すも一敗地に塗れる。その後、非正規労働者落ち、不適応と転職を繰り返し、泥水をすするような日々、いたずらに馬齢を重ねる。

マガジン

  • 【音楽エッセイ】エディに寄せて

    フェアーグラウンド・アトラクションの35年ぶりの「奇跡の来日公演」のとりとめのない感想と、それにかこつけて、過去の自分のブログ記事を寄せ集めたエディ・リーダー、ロバート・バーンズ(英詩人、1759年~1796年)、国木田独歩(1871年~1908年)、ボブ・ディランについての何の関連?というような雑文、要はエディ・リーダーへの思いをあれこれつづっております。

  • 【創作小説】胡蝶の夢

    青春の光と影、愛と孤独、そして死――北海道の札幌郊外や空知地方の美しい自然を背景に、ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織りなす、四つの物語から成る連作形式の小説「カオルとカオリ」の第四部です。 【あらすじ】父さんが死んだ。カオリのもとに、借金を抱え失踪した父エイスケの訃報が届いた。愛人と暮らしていたらしく、自殺との噂もある。カオリは結婚を間近に控え、お腹には赤ちゃんもいた。数日後、一枚の絵が届く。まさに飛びたたんとする蝶。差出人は死んだエイスケだった。なぜ?カオリは父の初七日に行く、そこで父の意外な秘密を知ることになる……。

  • 【創作小説】星に恋して

    青春の光と影、愛と孤独、そして死――北海道の札幌郊外や空知地方の美しい自然を背景に、ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織りなす、四つの物語から成る連作形式の小説「カオルとカオリ」の第三部です。 【あらすじ】「私」のもとに、不意に悲しい知らせが届いた。故郷の町へと急ぐが、大雪の中、高速バスはなかなか進まない。高校時代、親友のカオリと過ごした日々の思い出がよみがえる。高三の夏、カオリと二人、ペルセウス座流星群を見に行った時のこと。不慣れな運転で道に迷い、いつまでたっても目的地にたどり着けない、ちょうど「今」みたいに……。

  • 【創作小説】待つ

    青春の光と影、愛と孤独、そして死――北海道の札幌郊外や空知地方の美しい自然を背景に、ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織りなす、四つの物語から成る連作形式の小説「カオルとカオリ」の第ニ部です。 【あらすじ】カオリは厄介者である。家にも学校にも居場所がない。娘を女の子らしく育てたいと厳しくしつける母だが、カオリは反発するばかりだ。父は娘の手に負えない素行にも何を言うでもなく、いつも静かに見守っていた。そんな父がある日、失踪する。娘を持て余した母は、カオリを田舎の祖母にあずける。カオリと祖母の二人暮らしが始まる……。

  • 【創作小説】林檎の味

    「カオルとカオリ」という連作形式の小説の第一部にあたる「林檎の味」が完結しましたので、マガジンにまとめました。札幌郊外を舞台にした十代の少年少女の切ない初恋物語です。 あらすじ:カオルとカオリは幼なじみだった。神童とささやかれ、ピアニストを夢見るカオル、サッカーのエースストライカーのカオリ。何から何まで対照的な二人だったが、なぜか馬が合い、いつも一緒につるんでいた。中三の夏、カオルは難病を患う。早く退院してカオリに会いたい。カオルは長い闘病生活を耐えた。一方のカオリの家庭には不幸が忍び寄り……。

最近の記事

  • 固定された記事

「カオルとカオリ」電子書籍 販売方法を変更しました

 一念発起、「カオルとカオリ」という小説をセルフ出版したはいいが、1年になんなんとするも結果が伴わず、悶々とする中、方針を変更します。  作品は北海道の札幌郊外や空知地方の美しい自然を背景に、ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織りなす、四つの物語から成る連作形式の小説ですが、それぞれのエピソードを独立してkindleで電子書籍出版し、あわせてnoteでも有料マガジンとして販売します(各250円)。なお現在公開中の第一部「林檎の味」は無料公開を継続し、電子書籍

    • 【随筆】【音楽】美しき出来事、美しき記憶

      In New York, New York We’re out in the morning We’ve seen out the night Walking the dawn New York, New York The light hits the buildings We’re out on the town It’s just like the movies In New York city    CDショップの広いフロアでしばし立ち止まっていた。ニューヨークの美しい

      • 胡蝶の夢(Ⅳ)

         霜川駅に着いた。小さなターミナル駅の前のさびれた商店街はもう真っ暗だ。眠りこけた街にしんしんと雪が降る。明日の朝はかなり積もりそうだ。長く厳しい冬が始まる。  聞き慣れたクラクションの音に振り返ると、カンジのバカでかい四駆がとまっていた。  「どうだった?」  カオリが助手席に乗り込むや、カンジは土産話をせがむ子どものように聞いてきた。  「いろんなことがあって、今はうまく言えない。いつか話すわ」

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        • 胡蝶の夢(Ⅲ)

           ドアが開き、ずんぐりとした憂鬱そうな表情の女性がぬっと顔を出す。この人が電話の人、愛人、じゃなくて、内縁の妻のマキコさんか。マキコがはれぼったい目でカオリを一瞥すると、カオリもほとんど本能的にメンチを切り返した。天を衝く怒髪、意地っ張りそうな額、反抗的な目――マキコは上から下へ、品定めするように素早くカオリを眺めると、大きなお腹に気づいて当惑した。  「言ってくれれば駅まで迎えに行ったのにさ」  そしてカオリを玄関に招き入れると、破顔一笑した。  「今日は喪服で明日はウェデ

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        「カオルとカオリ」電子書籍 販売方法を変更しました

        マガジン

        • 【音楽エッセイ】エディに寄せて
          3本
        • 【創作小説】胡蝶の夢
          4本
          ¥250
        • 【創作小説】星に恋して
          4本
          ¥250
        • 【創作小説】待つ
          4本
          ¥250
        • 【創作小説】林檎の味
          20本
        • 【映画エッセイ】エリセに寄せて
          2本

        記事

          胡蝶の夢(Ⅱ)

           訃報が届いてから四日後のことだった。夜勤から帰ると、珍しくカンジが起きて待っていた。バーボンをあおっている。迎え酒だろう。  カンジが黙って指さすテーブルの上には、お盆くらいの大きさの小包が置いてあった。転送印がたくさん押してある。カオリは無雑作に手に取り、差出人を確認する。  「父さん!」  危うく小包を落とすところだった。  「いたずらか何かか?」  「送ったのは本人よ。おやじの筆跡だし」  はやる気持ちを抑え、小包を開けると、一枚の油彩画が出て来た。まさに飛び立たんと

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          胡蝶の夢(Ⅱ)

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          胡蝶の夢(Ⅰ)

           来るんじゃなかった……。  大きなお腹を抱え、真っ黒な喪服に身を包んだカオリは、小さな無人駅に着くと、後悔で胸がいっぱいになった。  ズリ山が広がる荒涼とした風景。生粋の道産子のカオリだが、本物のズリ山を見るのは初めてだった。お昼に食べたプリンを思い出す間もなく、二両編成の鈍行列車は一人ぽつねんと立ち尽くすカオリを残して発車する。遠い異星に置いてきぼりでもくらったような心細さに、カオリはつんつんに逆立ったパンクヘアーをかきむしった。  マジ、来るんじゃなかった!

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          胡蝶の夢(Ⅰ)

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          星に恋して(Ⅳ)

           私は霜川駅には戻らず、最寄りの無人駅から帰ることにしました。久しぶりに訪れたカオリとの思い出の場所は記憶よりもずっとちっちゃく、今にも雪に埋もれてしまいそうでした。  私は待合室でダルマストーブにあたりならが列車を待ちました。カオリがいつも本を読んでいたそのベンチは堅くひんやりしていて、カオリは何だってこんな心まで冷え冷えしてくるような寂しい所が好きだったんだろう、そんなことに思いをめぐらせながら時刻表に目をやると、列車到着まであと七分です。  その瞬間、ガラッと勢いよく

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          星に恋して(Ⅳ)

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          星に恋して(Ⅲ)

           少し眠ってしまったようです、運転席の上の時計は零時を回り、吹雪はますます強くなっています――不気味なほどの白さと静けさ、私は今、どこを走っているのでしょうか、本当に故郷に向かっているのでしょうか――あの夜、カオリは何をお願いするつもりだったのでしょうか、あの夜、もしも星に願いをかけていたなら――実は卒業後、一度だけ彼女に会っています、二十歳の時のことです――。  

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          星に恋して(Ⅲ)

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          星に恋して(Ⅱ)

           それは夏休みに入ってしばらくたった頃のことでした。  私は受験勉強に身が入らず、机の上に乱雑に散らかった参考書を前に、ぼんやりと物思いに沈んでいました。実際、自分の部屋にいると始終両親のいさかいが耳に入り、勉強に集中するどころではなく、気がおかしくなりそうでした。すると、玄関の目と鼻の先でクラクションが鳴りました。窓から外をのぞくと、一台のぼろぼろのピックアップトラックがとまり、運転席からカオリが顔を出し手を振っているではありませんか。  驚いて外に飛び出すと、カオリは得意

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          星に恋して(Ⅱ)

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          星に恋して(Ⅰ)

           カオリが死んだ――それは突然の知らせでした。  大学の講義を終えるや、家に戻って喪服を引っ張り出し、あれやこれや準備を済ませると、大雪の中、札幌駅へと急ぎ、何とかこの最終の霜川行高速バスに飛び乗りました。  カオリは特別な友人でしたが、高校を卒業して以来、もう何年も連絡を取っていません。十年以上になるでしょうか。もちろん、病気のことも知りませんでした。  駅で買ったお弁当で空腹を満たし、眠剤を口に放り込んでシートを倒すと、ほっとしたのでしょうか、いい具合にうとうとしてきまし

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          星に恋して(Ⅰ)

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          待つ(Ⅳ)

           町はずれの半導体工場の正門から、帰宅を急ぐたくさんの工員たちが出て来る。その群れにまじって、一台の赤い自転車がすいすいと金魚のように流れをぬう。乗っているのは工員のブルーの制服を身にまとったカオリだ。高校を卒業すると、期間工としてここで働き始めた。  工業団地のすぐ近くのスーパーマーケットから、大きな買い物袋を抱えたカオリが、大きな声でまくしたてながら出て来る。携帯を片手に、耳の遠いシズエを相手にしているようだ。  「だからちゃんと買ったって。心配しないでよ。今日はアタシが

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          待つ(Ⅳ)

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          待つ(Ⅲ)

           布団ががばっとひっぺ返された。カオリはびっくりして目を覚ます。意地悪そうに口元をゆがめたシズエが上から見下ろしていた。  「いつまで寝ているんだい?うちは旅館じゃないんだよ。年寄りは朝も早いんだから。気を遣ってちょうだい」  シズエはそそくさと布団を押入れにしまう。カオリはゆっくりと体を起こし、シズエに向け中指を立てる。

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          待つ(Ⅲ)

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          待つ(Ⅱ)

           カオリが管理人から借りた合鍵で、その築三十年の木造アパートのドアを開けると、ギーと軋む音が廊下に響いた。  そこはエイスケがアトリエとして近所に借りていた小さな一室、世捨て人の父の隠家だ。足を踏み入れるのは久しぶりだった。きちんと整理整頓されているたくさんの絵画、絵具、オブジェ類。煙草と絵の具のまじった独特の匂い。窓から差し込む優しい朝の光。日当たりはいい。エイスケはそこだけはこだわったようだ。子どもの頃はよく遊び場にしたものだ。カオリはあまり代り映えしない室内をぐるりと見

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          待つ(Ⅱ)

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          待つ(Ⅰ)

           カオリは厄介者である。  ぼろぼろのTシャツとブラックジーンズにぼさぼさのパンクヘアー。反抗的な眼つきと大人もやり込める辛辣な毒舌。家に帰りたがらず放浪癖もある。娘を女の子らしく育てたいときびしくしつける母だが、カオリは反発するばかりだ。父は娘の手に負えない素行にも何を言うでもなく、いつも静かに見守っていた。

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          待つ(Ⅰ)

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          【随筆】【映画】星と奇蹟

           「もしかしたらビクトル・エリセに会えるかな」。私と友人はそんな淡い期待を胸に抱いていた。学生時代のこと、私たちは初めての海外旅行、スペインへの旅立ちを前に、少し興奮していた。「それにしても、エリセは映画を撮らないで、どうやって食べているんだろう」。「さあ、奥さんが作家らしいから食べさせてもらってるんじゃないか」。大きなお世話であるが、当時情報はほとんどなかった。「だったら奥さんに何かプレゼントを持って行こう」。何が「だったら」なのか、そのロジックはともかく、私たちは空港の土

          【随筆】【映画】星と奇蹟

          【随筆】【映画】見出された時

           「ミツバチのささやき」(1973年)には完成版のシナリオからカットされた導入部があった。場面は夜汽車の中、父親の葬儀に出席するため故郷に向かうアナの回想から物語は始まる。アナは32歳。スペインの南部から郷里に向かう列車の中、父親がミツバチの大群に襲われて死に、その光景を少女が無関心に眺めているという悪夢を見る。目覚めたアナの前に現れるフランケンシュタインの幻影。車窓に映る街の光が映写機の光にオーバーラップし、子供時代、村の公民館で「フランケンシュタイン」を観たシーンへと移行

          【随筆】【映画】見出された時