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【創作小説】林檎の味

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「カオルとカオリ」という連作形式の小説の第一部にあたる「林檎の味」が完結しましたので、マガジンにまとめました。札幌郊外を舞台にした十代の少年少女の切ない初恋物語です。 あらすじ:…
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固定された記事

【小説】林檎の味(一)

 カオルとカオリは幼なじみだった。  二人が知り合ったのは小学四年生の頃のこと。カオルが…

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【小説】林檎の味(二)

 蒼白い顔に浮かぶ物憂げな表情、先の先まで繊細さの詰まったような長い指、せかせかと神経質…

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【小説】林檎の味(三)

 何から何まで対照的な二人だったが、なぜか馬が合い、いつも一緒につるんでいた。  そんな…

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【小説】林檎の味(四)

 その頃のカオリについての思い出は、その名のとおり、多く匂いに結びついていた。  カオリ…

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【小説】林檎の味(五)

 ある朝、カオルが目を覚ますと、体が全く動かないことに気がついた。突然の異変に軽いパニッ…

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【小説】林檎の味(六)

 カオルは朝からそわそわと、窓の外を眺めていた。入院してもう一カ月になる。病状が少し落ち…

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【小説】林檎の味(七)

 久しぶりの再会だったが、二人して石にでも変えられたかのようにひどく口が重かった。カオルはテーブルの上のサボテンを見ることもなく見ている。お見舞いに鉢植えという非常識は、カオリのことだからまあ、あり得るとして、何でよりによってサボテンなんだろう。会話が途切れると、そんなことが変に気になった。カオリが沈痛な表情で重い沈黙を破る。  「ギラン・バレー症候群って、名前からしてヤバくない?」  「別に不治の病ってことではないらしいよ。治る人の方がずっと多くて、死ぬこともないみたいだし

【小説】林檎の味(八)

 見舞いはちょうど良いタイミングだったのかもしれない。カオリの訪問から一週間もすると、す…

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【小説】林檎の味(九)

 早く退院してカオリに会いたい――カオルは来る日も来る日も、そんなことを考えながら、長い…

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【小説】林檎の味(十)

 「ただいま……」  久しぶりの我が家、カオルは小さな声で居間に入ると、真っ先にピアノに…

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【小説】林檎の味(十一)

 真新しい学生服に身を包んだカオルが横断歩道を渡る。ゴールデンウィークも終わり、みんなか…

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【小説】林檎の味(十二)

 カオルはシンジに教えてもらったカオリのクラスをそっとのぞき込む。もう始業時間だが、いく…

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【小説】林檎の味(十三)

 六月に入ってからというもの、本当によく雨が降る。いわゆる蝦夷梅雨というやつだが、今年は…

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【小説】林檎の味(十四)

 生徒たちでごった返す昼休みの購買部。行列の前の方でパンを買っているカオリを見かけた。今日こそ話しかけよう、自然な感じで、とカオルが思う間もなく、カオリは行ってしまった。  カオルは教室に戻ると弁当箱を広げた。級友たちがめいめい輪になって、わいわい昼食をとる中、カオルは窓辺の席、一人ぽつんと箸を動かしている。なんとなくそれがクラスでのポジションになってしまっていた。  窓の外をぼんやり見上げる。屋上のフェンスに体をもたせているカオリの遠景が目に入る。カオリの定位置だった。一人