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第18話 ジーンズが入った

あっという間にノミちゃんは5ヶ月を迎えようとしている。もう5ヶ月かぁと思う反面、やっと… やっと… という気持ちも大きい。

ノミちゃんの著しい成長を間近で見て感動する一方で、産後の心と体の不調は無視できないくらいに大きくて辛かったりする。節制することなく好き放題食べた結果、妊娠でたっぷり14キロ増えた体重はなかなか落ちず、完全に戻るには長い道のりである。筋肉は落ちて、なんかもう全体的に重力に従順というか、逆らうことなどまったくできない。

色んなことが産前や妊娠前と違いすぎた。ただガムシャラにオムツを替え、授乳をして、抱っこしてあやしたり、寝かせたりする毎日を送っていて、ふとポツンと社会から取り残されたような気持ちになる。やっとジーンズが履けると待ち望んでいた産後だったけれど、持っていたジーンズは1本も入らなくなっていた。

とはいえ、ノミちゃんがキャッキャと声をあげて笑い出したり、首が座ったり、懸命な練習の末に初めて寝返りをした瞬間なんかは、「おぉぉぉおおおおおお!やったねぇぇ!」と一つ一つの成長に喜びが感じられるし、誇り高いとも感じられる。
離乳食も始めるし、スプーンへの反応を見てみよっかなと麦茶をあげてみたら、きちんと「あ〜ん」でアーンの口をするのだから驚いた。彼女は日々、ぐんぐんと成長している。我々のことを具に観察して、急成長している。ただ、私の暴君っぷりだけは学ばないでほしいと願っているのだが。

横向きで寝るのが好きらしい

私は、今の自分をきちんと受け入れることができているのだろうか? 妻であることも、母であることも、筋肉が消えたのも、めんどくさがりであるのも、何かとうまくできないところも、心配性なところも、母猪のように獰猛なところも、全て。

産後3ヶ月をすぎた頃、産後ケアで知り合ったお母さんが「産後ケアで開いているエクササイズクラスに行こう!」と連絡をくれた。行こう行こう!と参加したクラスは、産後ケア施設で開いているクラスの中でも1番ハードなエアロビ系エクササイズであった。パワフルな先生と一緒に体をフルに動かして、確かにハードで汗は滝のように流れるが、ストレスも一緒に流れ出ていくのだった。彼女は私にとって初めて東京でできたお友達だけれど、彼女の娘ちゃんはノミちゃんにとっても初めてのお友達で、思い切り動いた後、みんなでランチをして、日々のことを話してスッキリして帰るというのは、殆どリチュアルみたいなものだ。

自分が暴君にならないために、自分のために始めたこともある。フランス語を習い始めたのもリチュアルの一つだし、本を読みに1人コーヒースタンドへと行くのもリチュアルの一つだ。少しずつわかるフランス語が増えてきたのが好きだし、活字が苦手だったけれど、最近では小説を読んでその中の世界を楽しむのが好き。

けれども結局のところ、どんなに自分の好きなことをしたとて、暴君っぷりはさほど治らず、命の母(ホワイト)が1番頼りになると知った。

噂には聞いていたけれど、命の母の効果がすごい…

ある日、大好きだけどまったくジッパーが閉まらなかったジーンズが入るようになっていた。
涙目でノミちゃんに「ジーンズが入った!!!!!!!!!!!!」と抱きついた。

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