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2022年3月の記事一覧
ぼくからぼくが出て行ってしまった
ある日、ぼくはぼくがぼくから出て行ってしまったことに気づいた。それは唐突な気づきだった。天から降って来たような気づきだ。落下してきたものが、ぼくに直撃いたような気づきだった。
ぼくからぼくがいなくなると一体どうなるのか、疑問や好奇心を持たれる向きもあるかもしれないが、こればかりは一回体験してみないと、百万言を費やしたところで理解はできないだろうと思う。
ひとつ言えるのは、これは父が蒸発すると
愛について語るときに我々の語らなかったこと
ぼくらが愛について語り合っている間に、戦争が起きていた。それはぼくらには関係のない戦争だったけれど、ぼくらはその事態に愛の無力さを突きつけられた気がした。
「愛なんて無力だ」
「無力だね」
そもそも、ぼくらの愛についての議論だって、堂々巡りの平行線、どこまで行っても交わることなく、交わったかと思ってもすれ違いで、なんらかの合意を見るなんて夢のまた夢、妥協点を探ることさえできない有様だったのだ。