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「彼岸の図書館」

青木真平・海青子 「彼岸の図書館」 (夕書房)

本のタイプにもいろいろで、自分の欠点を指摘し正してくれる本もあれば、自分の考えは間違ってなかったんだ・・・と後押ししてくれる本もある。

この本は圧倒的に後者に属する・・・のだが微妙に前者の魅力を含んでいるように感じられるところが面白い。

都会での暮らしに倦み、当人の言葉を借りると”命からがらに”奈良は東吉野に移転。
旧い家を借り「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を開設する物語とその周辺・・・。

キーワードだけ並べてみても”移住と引っ越し”、”住み開き”、”仕事””半農半X””土着””分断””生き辛さ”などなど・・・共通点、思いを同じくする部分に膝を打ちまくり。この時点で面白すぎる。思いの再確認。

それらを彼らの”師匠格”である内田樹氏が後押ししてゆく。(本書は対談形式の記事が多い。)
特に我が祖国の政府が”不要”と宣った人文学を、”非常時にこそ有用”とする言葉はこの混迷期に爽快さすら感じる。

何で今長野の片田舎に暮らしているのか?さらにその山奥で本屋(図書館)なんて面倒な感じの事をしているのか?

規模は違えど方向性・手法は自分のcoldmounatainstudyと、とても近しいと思う。前回記事の「イドコロをつくる」でも触れた”正気をたもつための場所”という感覚だ。

それでいてやはり自分とは違う部分も多いわけで、その部分は「それでいいのか?」と問い正してくるわけだ。

プラスα、変化の余地。(進化・成長じゃないところも当初から読み取れるポイントのひとつだ。)

自分の考えをなぞってばかりじゃあ、つまらない。

その他の学び・・・要するに他の人にビシッと怒られるような場面がなきゃあダメなワケだ。甘やかされてのぼせ上っているようじゃあ。(でももちろん、そればかりでもツマラナイ。)

この本は前々から気になっていたのに何故か後回しにしていた本。テーマ的に回避できないはずなのに何故かそれを避ける。

それはひょっとしたら自分に関係ないから・・・じゃなくて自分に近すぎるから、なのかもしれませんね。そういう本って「そんなの判ってる」って驕りもあるしかえって疎ましく感じることもある。
(最近そんな本に結局再び巡り付き、結局読む・・・なんてことが続いています。)

しかしこの本、大変刺激的な好著でした。これを機に彼らの”その後”も読んでみたいと思います。

今度は日記。面白いひとの日記というのはやはり、面白いものです。
これも時期的な問題も含め、どんな印象と考察が記されているのか楽しみですね。

大事なのは何?

いずれ自分に対してだけは、学びと実践を止めてはいけないですね。

もちろん今後もそうしていくつもり。

そのためにいいクスリとなる、いい本でした。


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coldmountainstudy@gmail.com 

coldmountainstudy  店主:鳥越将路


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