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寒山の書斎から。2022.4.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。


4月は文庫新刊に恵まれました。

岸見一郎 「哲学人生問答」 (講談社文庫)


「嫌いな人との付き合いが避けられません」「自分だけが労力を提供するのは損です」「自分が好きではなく、自信もあ
りません」そんな人はどうすればいいのか。
人生について切実な41の質問に、心理学にも通じた哲学者が明確な答えを出す。
よく生き、幸福になるための示唆が今を生きるすべての人に響く、導きの書。

「給料とやりがい、どちらで仕事を選べば幸福になれますか」
「自分が比べなくても、人から比べられてしまいます」
「不満を糧に生きています。間違っていますか」
「危機感や焦燥感がないとモチベーションが保てません」
「自殺したい人、闘病中の人に対して何ができるでしょうか」
「自分の人生を生きることと、他者貢献の割合がわかりません」

高校生と哲学者の本気の人生問答が、老若男女の胸を打つ。

対談やインタビュー、Q&A・・・そんな形はその人の”カタチ”に入っていきやすいですよね。アドラー心理学の岸見一郎さんは、この本が好きなので今回も選んでみました。

考え事のおともに・・・と思ってます。

続いては沖縄。

与那原恵 わたぶんぶん わたしの「料理沖縄物語」  (講談社文庫)


わたぶんぶん。沖縄の言葉で「おなかいっぱい」。沖縄生まれの両親の手料理。日本統治下の台湾の思い出が残る母のビーフン。沖縄本島、八重山、奄美、南米ボリビアの移民村コロニア・オキナワの味。そして東京で食べる沖縄料理。たべものが連れてくる懐かしい思い出に、おなかも心も満たされる名エッセイ集。

おなかいっぱい(わたぶんぶん)、心もいっぱい

記憶をよびさますあの味、あの料理。
あの人この人との満ちたりた時間。

与那原恵さんは旅モノばかり読んでいた当時、出逢って以来好きです。出逢ったのはこの本。


今回は”レシピ集に収まらないレシピ集”といった感じかな?実際自分のキッチンで作ってみるのも愉しみのひとつですね。

続いては詩人のエッセイ。

長田弘 私の好きな孤独  (潮文庫)

詩人であり、絵本や随筆の傑作も多い長田弘氏。1999年6月に刊行され、2013年5月に新装版が刊行されたエッセー集『私の好きな孤独』、待望の文庫化!!

「孤独」はいまは、むしろのぞましくないもののようにとらえられやすい。けれども、本来はもっとずっと生き生きと積極的な意味だった。

「たった一軒のカフェに親しむだけで、知らなかった街が、ふいにどれほど、
じぶんに親しい街に変わってゆくことか。朝の清潔な孤独を味わえる街の
店に座っていると、そのことが浸みるようにわかってくる」
( 本書収録「朝のカフェ」より)

音楽、珈琲、旅、酒、読書──。
孤独を慈しみ味わうために必要な「小道具」たちをモチーフに、いまなお多くの人に愛されつづける「言葉の魔術師」が詩的魅惑を豊かにたたえながら紡ぎ出し指南する、「孤独」との明るく前向きな付き合い方。

自分にとって”敷居の低い”詩人である長田弘さん。そのエッセイもどれも面白いのですが孤独というより一人の愉しみを書いたこのエッセイ集もまた然り。
そして、表紙と挿絵。
過日惜しくも亡くなられた本山賢司さんのイラストがじわじわ素晴らしい。併せて愉しみたいところです。

次は熊野古道関連。

甲斐みのり 「田辺のたのしみ」 (サンクチュアリ・パブリッシング)

熊野古道の旅で訪れた小さな(それでも道中では大きいのですが)町についての、本が出ました。

和歌山県田辺市。自治体としての規模は和歌山市に次ぎ県で2番目なのですが、ここで取り上げられるのはあくまで紀伊田辺駅周辺のこと。

今年の旅では闘鶏神社のみ参拝しましたがあとは通過・・・1冊の本になるほど魅力のつまった町であったとは。

著者の甲斐みのりさんといえば東京・京都など大きな街や建築にスポットを当てた旅・・・という印象でしたが読んでみると田辺に通い始めて10年近く、多い年は季節ごとに訪れると。

それだけ惹きつけられる場所なんですね。

自分も次に熊野を歩くとしたら、中辺路。

田辺が、起点になります。

それまでこの本でじっくり学んで、想像して。

次の機会を待とうと思います。

~今年の旅についてはこちらをぜひ。

次は前から読もうと思っていて、出先の大きめの書店をチェックしてたんですが見つからなかった一冊。

檜垣 立哉 食べることの哲学  (教養みらい選書)


われわれはなにかを殺して食べている!

ブタもクジラも食べるのに、
イヌやネコはなぜ食べないのか?
宮澤賢治「よだかの星」など食をめぐる身近な素材を、
フランス現代哲学と日本哲学のマリアージュで独創的に調理し、
濃厚な味わいに仕上げたエッセイ。
食の隠れた本質に迫る逸品。

世界思想社創業70周年記念シリーズ「教養みらい選書」第2弾

【本書のメニュー】

0. 付き出し
われわれは何かを殺して食べている

1. 前菜
料理の技法――味・レヴィ=ストロース・腐敗

2. オードヴル
カニバリズムの忌避――法の外のタブー

3.スープ
時空を超える宮沢賢治――生命のカニバリズム

4.肉料理
食べることは教えられるのか
――「豚のPちゃん」から学ぶこと

5.海産料理
食べてよいもの/食べてはならないもの
――イルカ・クジラ漁と『ザ・コーヴ』の真実

6.デセール
人間は毒を喰う――アルコール、嗜好品、デザート

7.食後の小菓子
食べないことの哲学――絶食と拒食

哲学者の方が書いていますが食べることについて幅広く考える一冊・・・哲学というには幅が広すぎる感じなのでざっと各分野について”提案”といったところでしょうか。
(各項目で掘り下げれれば一冊の本になりえるテーマだと思います。)

最後は、イタリアからの翻訳本。

P.コニェッティ フォンターネ 山小屋の生活  (新潮クレスト・ブックス)

スマホを捨てよ、山へ出よう。自然との新たな共生を啓く21世紀版『森の生活』。30歳になった僕は何もかもが枯渇してしまい、アルプスの山小屋に籠った。都市での属性を解き放ち、生きもの達の気配を知り、五感が研ぎ澄まされていく――。世界的ベストセラー『帰れない山』の著者が、原点となった山小屋での生活と四季の美を綴る。

一見しただけで大好物なテーマではあるのですが、イタリアと山暮らしというのがどうも結びつかず意外な感じがしたりもして(イタリアに山岳地帯があるのはもちろん知っているのですが)興味を惹かれましたね。

明日からは、連休。

今年は過去2年よりも賑やかになりそうなここ高原なのですが毎年この春の連休は家周りで静かに(しかし内容濃く)過ごすのが通例の我が家。

静かな時間のお供にいい仲間たちが増えました。

あ。

もちろん予定があえばライブラリー&ストアは開けれますので、遊びに来てくださいね。


http://www.coldmountainstudy.com/
coldmountainstudy@gmail.com 

coldmountainstudy  店主:鳥越将路

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