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寒山の書斎から。2021.12.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。

毎月のピックアップ、年内最終便です。
(と言ってもnoteではまだ、3回目なのだけれど。)

今月は文庫・新書から。ともにヤマケイ。

W・プルーイット 「極北の動物誌」 (ヤマケイ文庫)

”『沈黙の春』が人類による自然破壊に警鐘を鳴らした1960年代初め、
アラスカの大地を核実験場開発の脅威から守り抜き、そのため故国アメリカを追われた動物学者がいた。
彼の名はウィリアム・プルーイット。極北の大自然と生命の営みを、詩情あふれる筆致で描き、
写真家の星野道夫が遺作『ノーザンライツ』のなかで、敬意をこめて
「アラスカの自然を詩のように書き上げた名作」と評した幻の古典を文庫化。”

開高健や星野道夫から常にアラスカという土地には興味を持ち続けていますので、関連本は多く読みます。
その中でも”古典”に分類できるものですね。

若林輝 「武蔵野発 川っぷち生きもの観察記」 (ヤマケイ新書)

”まちなかの川で楽しむ、驚きの自然発見!
散歩がてらに楽しめる非日常のワイルドライフ!
生きものの関係をたどっていけば、身近な川がワンダーランドに!”

この考え、大好きですね。まさに自分の少年時代そのもの。
暇を見つけては川沿いに自転車を走らせ、歩き、自然観察がライフワークでした。

今暮らすのは川で言うと渓流エリアで、この本で紹介されている里川エリアとはまるで生態系が違う。
それでも見る目を養う、やり方を学ぶ・・・には十分な一冊です。

そうそう、新潮からは國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学」が文庫化されたのですが、これは先日のブックカフェで単行本を購入したのは先述の通り。

”暇とは何か。人間はいつから退屈しているのだろうか。
答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう。
2011年朝日出版社刊『暇と退屈の倫理学』、2015年太田出版刊『暇と退屈の倫理学 増補新版』と現代の消費社会において、気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー、あとがきを加え、待望の文庫化。”

本に関する2冊も。

南陀楼綾繁さんは「日本の古本屋」のメールマガジンをまとめ加筆したもの。

”「古本のある生活」をおくる、36人へのインタビュー集。

本を集め、本と遊び、本で調べ、本から本を作る……。
その情熱と執着は、どこから生まれてどこへ行くのか?
読者の記録を追いかけてきた著者による、古本マニアたちの標本箱。”

矢部潤子さんは1月に参加する読書会の課題本ですね。

”なぜ売れる本を左端に積むのか

本を売る人はもちろん買う人が読んでも面白い、ますます本屋が好きになる書店員の知恵と工夫。

本屋の仕事にはすべて道理がある

これまでマニュアル化不可能、口承・口伝、見て盗む、あるいは独学で行なわれてきた書店員の多岐にわたる仕事が、今はじめて具体的・論理的に語られる。取引や流通のことから、売場作り、平積みの仕方、平台の考え方、掃除やPOPの付け方にいたるまで、1冊でも多くの本を売るための技術と考察。

”本屋本”を読んでの勉強はライフワークですし、やはり多少はこの手の話題も気になりますしね。

今月はこれくらいかな・・・と思っていたところ、先日の上田での本屋巡りでまたまた愉しみな一冊を発見。

”生きることの迫真性を求めて、大阪の都市から奈良の里山へ移り住んだ若き農耕民が構想する、生き物たちとの貪欲で不道徳な共生宣言。一般に禁欲や清貧といった観念に結び付けられている里山を、人間を含む貪欲な多種たちの賑やかな吹き溜まりとして捉え直し、人間と異種たちとの結節点である堆肥を取り上げながら、現代社会において希釈・隠蔽されている「生の悦び」を基底から問い直す。本当に切実な問いと、根底を目指す思考とを、地についた生活に支えられた文章で表した、読む人に鮮烈な印象を与える第一著作。

「もとよりわたしは何者でもなく、何者かであろうとも思わない。当然、守るべき社会的立場など持ち合わせていない。しかし、だからこそ語りうる言葉があると思う。わたしは何の実績もない無名の落後者に違いないが、土の上では誰でも一匹の生き物なのであり、地位や肩書はかえって邪魔なものだ。わたしがつねに求めているのは、お行儀のいい言説ではなく、「ほんとうに切実な問いと、根底を目指す思考と、地についた方法」だけである。」(あとがきより)”

本屋仲間絶賛の一冊。
最初は自分には関係ないかな・・・なんて思っていたのですが青木真平さんの著作に登場して接点があるのかな、と。

そこに実物を目にして(このタイミング、結構大事ですね)一気に引き込まれました。積読の順番待ちを無視して次、すぐに読みたい。

そして。

昨年に引き続き今年最後に読む本は大事な人の一冊、と決めていました。

昨年は自分に多大な影響を与えた漫画家・故矢口高雄氏についての一冊。そして今年はもう一方の自分にとっての”巨星”の遺作を。

”薪ストーブと椅子作りと菜園を愛した田園生活の、夢と孤独と意義を、静かに力強く書き記した47篇。
<ブログから単行本へ>
ファイヤーサイドのウェブマガジン「森からの便り」にて、2007年から2019年まで13年に渡り連載されたエッセイ、田渕義雄「きみがいなければ生きていけない」全94篇の中から47篇を抜粋、再編集した追悼遺稿集。2020年1月掲載予定の原稿を準備していた一月三十日に、田渕氏は永遠の眠りについた。
他界後に寄せられた読者からの追悼コメントの多くは「田渕さんが残してくれた言葉の数々は私たちに勇気を与え進むべき道を示してくれるはず」という気持ちを綴ったものが多く、そしてそれは「本連載の書籍化を!」と望む声であった。
八ヶ岳に程近い金峰山北麓、標高1400メートルの山里に居を移し28年目。このエッセイはその28年目の1月から始まり、亡くなるまでの13年間の自給自足的田園生活の記録となっている。
今から44年前、1977年に発売された「アウトドアライフ入門」により、田渕義雄は日本のアウトドアブームの草分け的存在となった。「フライフィッシング教書」「バックパッキング教書」は、現在も重版を重ねる名著として読み継がれている。
コ○ナ禍を経験して、何かと生きづらさが加速する昨今。自然との関わりに芯を置いた田渕氏の暮らし方、生き方は、私たちに今を生きるヒントを与えてくれるはずだ。”

ブログ本・・・自分、このブログは購読していたのでほとんどの文は読んだことがある。それでもこの引用のように今必要と感じているからでしょうか?

昨年亡くなった隣村の偉大な先輩の一冊で、今年を終わろうと思います。

今年も一年間、田舎モンの本屋の戯言にお付き合いありがとうございました。

次の一年も懲りずに山奥から時節外れの斜めから見た、しかしそれだからこそ核心なのではないかと思える雑文と、そこに至るまでに肥やしとなった本たちに関するアレコレを発信していきたいと思います。

みなさま。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

http://www.coldmountainstudy.com/

coldmountainstudy@gmail.com 
coldmountainstudy  店主:鳥越将路


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