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新型コロナウイルスをスペイン風邪と比較して考える

 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。各国で外出規制や都市封鎖など、感染拡大防止策が実施されているにもかかわらず、今のところ終息の目途は立っていません。

 また、世界保健機関(WHO)は2020年4月22日、COVID-19は今後長期にわたり地球上から消えることはないとの見通しを示しました。当初「夏になれば自然に終わるのでは」という楽観論も存在しましたが、低緯度地帯(マレーシア・ブラジル・インドネシア等)でも感染者が激増している現状、気温と感染拡大の相関は「あまりなさそう」であるというのが現在の見立てです。ちょうど100年前に全世界的に流行し、世界人口の約3分の1にあたる5億人が感染、うち2,000万から4,500万人の命を奪った「スペイン風邪」のパンデミックは、現在の状況に非常によく似ていると言えます。ここでは、スペイン風邪のウイルス流行の変遷を振り返り、COVID-19の今後について考えていきたいと思います。

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 スペイン風邪が終息して約2年後の1922年、事態の対処に当たった当時の内務省(同省衛生局、以下内務省)を編として出された報告書『流行性感冒「スペイン風邪」大流行の記録』では、スペイン風邪の日本における流行を第1回、第2回、第3回の3つに分けています。

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この数字を見る限り、第1回流行での感染者が圧倒的に多いですが、死亡率は1.2%強。遅れてやってきた第2回流行では、感染者数は第1回の10分の1程度ですが致死率は約4~5倍の5.3%弱にも及んでいます。最終的に、日本内地の総人口約5,600万人に対して約45万人が死亡。総人口に対する死亡率は0.8%となっています。第1回の流行では感染せず、免疫を獲得できなかった者が、第2回の流行で直撃を受け、重症化し死に至ったことが推測される数字となっています。これは、パンデミックは数次にわたって起こることを示しています。また、「パンデミックの波の後になればなるほど重症化する例が多い」というのはスペイン風邪のたどった揺るぎない事実でもあります。つまりパンデミックは津波のようなもので、第1波が押し寄せて収まったと思ってもまたすぐに第2波、第3波が来る、という事が分かります。

 よってCOVID-19にこの法則を当てはめると、パンデミックがいったん収まったと仮定しても、第2波の発生をすぐに警戒しなければならない、ということになります。

年齢分布

年齢分布

 しかし、COVID-19とスペイン風邪を比較すると決定的な違いも存在します。それは、年齢別死亡率の割合です。内務省報告の年齢別患者割合と死亡率の割合(1918-1919年間)を参照すると、 スペイン風邪は「21歳~40歳」の死者が多かったことが分かります。 もちろんそもそもの寿命が現在の半分強しかなかった100年前の日本は、社会を構成する人間の多くが(現代から見ると)著しく若く、高齢者がそもそも少ない状態ではありました。とはいえ、当時のスペイン風邪によるパンデミックの刃は、全年齢層にくまなく襲い掛かったのもまた事実であり、現代のCOVID-19のデータ(死亡者の約8割程度が高齢者)と比較すると大きく異なる点です。

 これが、今後対策を考えるうえでの最大の教訓であり、現代のパンデミックは、明らかに守るべき対象――高齢者や基礎疾患保有者が明確に存在しているのです。社会の全年齢階層を巻き込んでの大流行への対策は本当に正しいのでしょうか。皆さんのご意見をぜひともお聞かせください。

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