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ヴィルサラーゼさん超人伝説は継く - 2024年 in 八ヶ岳

八ヶ岳高原音楽堂が初体験だった人々(筆者含む)にとっては、音楽堂がステキ過ぎたことと、ヴィルサラーゼさんが相変わらず凄過ぎたことという、二重の衝撃だった!

2024年6月8日

エリソ・ヴィルサラーゼ
Elisso Virsaladze

ピアノ・リサイタル

シューベルト
6つの楽興の時 D780 Op. 94

ブラームス
ピアノ・ソナタ第1番ハ長調 Op. 1

リスト
コンソレーション第3番変ニ長調
3つの演奏会用練習曲 S.144より
第1番「悲しみ」変イ長調

プロコフィエフ
ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調 Op. 83

会場;八ヶ岳高原音楽堂
主催:八ヶ岳高原ロッジ

新宿から特急電車で小淵沢駅まで2時間。ワンマンのローカル電車に乗ってまずは清里駅まで。清泉寮でランチを食べてから隣駅の野辺山駅へ。そこから八ヶ岳高原ロッジの送迎シャトルバスで会場へ。

八ヶ岳高原音楽堂

音楽ホールは響きが命。石のホールに響く冷たく澄んだ音も好きだが、木のホールにじんわり温かく響く音もたまらなく好き。八ヶ岳高原音楽堂は贅沢に木材を使った空間だった。見渡す限り木、木、木・・・ゆったり座れる客席の椅子も木材の骨組みにクッションを取り付けたもの。

ぐるりと半周以上にわたりガラス窓が設置されているので、山の中にある八ヶ岳高原の新緑を眺めながらリサイタルを鑑賞する。想像以上の美しさに感激してしまった。小規模の演奏、特にピアノ!特にピアノソロ!において、最高のホールではないか!

八ヶ岳高原音楽堂

オーストリアのシューベルティアーデのホールを思い出す。再訪したい(涙)

八ヶ岳のコンサートの存在は以前から知っていたのだが、鑑賞のための移動時間とコストが気になって1度も行ったことがなかった。また例によって「日本つまらん、ヨーロッパに逃げたい」病に襲われて(笑)、日本でできるのにまだ実行していないことがなかったか探していた時に、ふと八ヶ岳の音楽堂のことを思い出して、思い切って来てみたのだ。好きなピアニストの1人、ヴィルサラーゼさんの演奏のためなら、そこまで行ってみても良いかと。そういえば、ヴィルサラーゼさんを追いかけて、鹿児島の霧島音楽祭まで行ったこともあるし(笑)

81歳のはず・・・なのだが、いつも通り黒ずくめの服で登場したピアニストの足元にワタシは気がついてしまった!まさかの高いピンヒール!

シューベルトの楽興の時の最初の曲は、私のイメージでは、この日のような新緑の爽やかな日に自然の中でくつろぐイメージなのだ。この時期のこの場所でのリサイタルの開始にぴったりだ。個人的な要注目は3番。痛心地いいのだ。シンプルだが表現力の高い演奏者が演奏すれば泣けるほど悲しくなる。ヴィルサラーゼさんは期待以上の研ぎ澄まされた美しい単音で奏でる。ああ、さすが、早くももうスズキは感無量だ。。この3番は、好きなピアニストかどうか見極める時に使える曲なのだ。これを最高に美しく弾けるピアニストは最強のピアニストである。5番のような和音でジャンジャン激しく弾く曲こそヴィルサラーゼさんの醍醐味なのではと思うのだが、そんな曲が得意でありながら、あのように3番を聴かせるとは!終曲6番は思いっきり感情込めてねっとり弾くのかと思いきや、スピーディ。要所要所、スピードは保ちながらも、丁寧に歌わせるが、全体としては、ややさっぱり。それもありだと思う。丁寧に弾きすぎると、多分この曲はなかなか終わらない(笑)

続くブラームスのピアノソナタだが、多分私だけでなく客席みんなビビったはず。突然、物凄い勢いでガツンとスタートを切った!(みんな頭の中に、81歳?81歳?うそー・・・という言葉が浮かんだのでは?) ド迫力に圧倒され過ぎた私は何だか大声で笑いたくなったのだが、がんばって堪えた。あまりにも凄過ぎるものを見て(聴いて)しまうと、人間笑いたくなることもあるんだな。。冒頭の激しい部分で、若干音が外れたかもしれないが、あの勢いで弾いて「若干」で済んでいるし、全く引きずらないのが、これまた凄い。私はこの曲をあまり詳しくは知らないのだが、第3楽章を聴きながら、だんだんこれがフィナーレのように感じてきてしまった。とっても華々しいのだ。これはフィナーレか?それとも、その手前か?楽章が終わった時のヴィルサラーゼさんに注目した。すると彼女は、その瞬間にガシッとピアノの上の縁を掴んで、クッと首を下げて、うつむいた。(その姿が絵になるんだ。カッコいい。)一瞬停止してから、すぐに続きを弾き始めた。そうか、あの激しいのは、やはり第3楽章だったか。聴いていると、むしろ第4楽章の方がスケルツォ的な雰囲気では?それにしても、第2楽章以外は結構激しい曲調が続くこの曲、最後まで勢いは止まらない!この曲がブラームスが20歳の時の作品ということを思い出した時、2度目の笑いのツボが到来。ブラームスさんがさぞかし驚きながら感動しているだろう。81歳の大物ピアニストがこんなに若々しくこの作品を表現しているのだから!

ほら、ピアノの向こうのガラス窓の外に小鳥が2羽やって来た。ピチピチ激しく鳴いている。ああ、きっと、ここで凄いことが起こっていることを察しているのだろう。さすがだ!(?)

後半プログラムのリスト1曲目は、これまた単音を美しく鳴らす曲。ヴィルサラーゼさんが弾く旋律はいつもやや強めだ。程よく芯のある凛とした音。2曲目はよく覚えていません(ごめん!)。

そしてお得意のプロコフィエフ。以前、多分2番を霧島で聴いた。あれも素晴らしかった。この7番もカッコいい。度肝を抜かれたブラームスのピアノソナタと比べると、プロコフィエフは想定通りのカッコ良さ、凄さかなと思う。魔法使いのように難なく完璧に音を鳴らしていく。フィナーレは激早ではなく、程よいスピード感で貫禄のフィニッシュ。7番は私の好きなショスタコーヴィチに繋がっていく感じがして好きだ。しかし、私はプロコフィエフのソナタは絶対に弾けないと思うので楽譜さえ持っていない。詳細をよく知らないのでヴィルサラーゼさんの演奏が完璧と思う。

とはいえ81歳ということを考えると、何度驚いても足りないぐらいだ。実はこのコンサートに行こうと思った時は、もしかしたらそろそろ彼女の生演奏を味わうのは最後かもと考えていた。引き続き絶好調ではないか。また来日してくれそうだ。こうなると気になってしまった。何を食べたらそんなにパワフルでいられるのだろうか?
その体力!(腕や指の力も凄い!)
集中力!(疲労感なく最後まで快走!)
指先の神経とか感覚!(単音の絶妙な響きや細かい音で綴るキラキラ感が半端ない!)

客席が上品さを保ちながらも(?)熱狂的だったので、客席の興奮度はきっとヴィルサラーゼさんにも伝わったはず。嬉しそうな笑顔だったので嬉しい。

アンコール1曲目が懐かしい曲!突然すぎて曲名が出てこない。何だっけ?子供時代に弾いたかも?でも、こんなに、こんなに美しく繊細な演奏は聴いたことない!!中間部が出てきてようやく気付いた。ショパンのマズルカ47番だ。家に帰ったら久しぶりに弾いてみたくなった。(シューベルトの楽興の時も久しぶりに弾きたい!)

アンコール2曲目も3拍子だったので、マズルカかしらと思って聴いていたのだが、マズルカにしてはキラキラ感が凄い(笑)終演後に張り出された曲名を見るまで分からなかった。シューベルト=リストの「ウィーンの夜会」。ガッツリ激しい和音系も上手いが、キラキラ感もヴィルサラーゼさん凄いのだ。以前、生演奏で聴いたモーツァルトの曲が凄かった。曲名忘れてしまったけど。CDにも入っていたはず。滅多に演奏されない曲だったと思う。


何とワタクシ来月も八ヶ岳高原音楽堂に行くのだ!その時に八ヶ岳高原ロッジに宿泊する。広い敷地、大自然の中にある素敵なロッジであることを知ったので、来月とても楽しみだ!

今回は地域内の別のホテルに宿泊。気になっていた八ヶ岳グレイスホテルに行ってみた。詳細は省略するが、こちらも感動した。たとえば星空観察会。変わりやすい山の天気のため、あいにくの曇り空となってしまい、室内での映像鑑賞となったのだが、星のプロによる充実の内容だった。本当にこれが無料のイベントで良いのだろうか。懐かしいな。星好きがこのホテルに足繁く理由もよくわかった。また別の機会にリベンジ宿泊しよう。とはいうものの、天気が変わりやすいということだったし、せっかく沢山知識を得たので、好奇心旺盛な観察会参加者のうち何人かは、会の直後に外に出てみた(笑)

何と、星が出てたー!!

こんなこともあろうかと、夕食の前にささっと調べ物をしておいたのだった。先日、実に6年9ヶ月ぶりにiPhoneを機種変更した。この比較的新しいiPhoneなら、ひょっとしたら星空の写真を撮れるのではと思って。ナイトモードで、シャッター速度を長くして、カメラを固定しなければならないのだが、固定するものは持っていない。一か八か、ぐっと脇を締めて動かさないように気をつけて、数枚の写真を撮ってみた。部屋に戻って確認してみたら、ちゃんと撮れていた!!やったー!

八ヶ岳グレイスホテル

翌日は真っ直ぐ東京に戻るつもりだったが、結局のところ再び清里駅周辺を散策。前日とは違う方向に歩いて萌木の村へ。



ネガティブ人間の発言で申し訳ないが、人生とは退屈なのだ。だから、みんな何とか退屈さを誤魔化すために必死だ。誤魔化すための技をできるだけ沢山持っていたいものだ。私にとってはヨーロッパに行って日本のことなんか完全に忘れてしまうのが人生で最も大事な幸せな時間である。素直にライフイズビューティフルと言えるのはヨーロッパにいるときだけ(笑)

ヨーロッパに行けない時、日本で退屈さを誤魔化すための技の一つとして、八ヶ岳高原音楽堂での音楽鑑賞を追加しよう。

旅はいいよね。音楽を目指して旅をすると、絶景もついて来るという私の説を改めて実感した。

そうそう、音楽旅をすると絶景が見られるという記事をとっても張り切って書いたのに、ほとんどアクセスされていない。誰も興味ないようだ(笑) 共感が大事な時代というのに、私は世間と共感できないのさ。ははは。ライターに向いていません。

一方で、気軽にテキトーに書いた「アドレナリン出まくり興奮するピアノ曲6選」が、イマイチな記事ばかりの私のnoteの中では健闘していて驚いている。気に入ってくださった皆様、ありがとうございました!

音楽鑑賞レポートの記事は以上。

その他の詳細は省略するが、下にいくつか写真を共有しておく。あら!ステキ!と思ったら、ぜひ八ヶ岳のコンサートや清里&八ヶ岳エリアの旅を計画してみては?!

後日、ドイツ語で動画を作る予定。ドイツ語でアウトプットする機会を増やしたいと思って去年からちょくちょく作っているのだが、note記事以上に不人気でほとんど誰にも見られていない(笑) 虚しいので公開から1ヶ月後には、ほとんど非公開化している。共感力ゼロ、とほほ。あはは。

おまけ(写真)


清里 清泉寮ファームショップ
八ヶ岳高原音楽堂の周辺で見つけた不思議な植物に、数名が気付いて写真撮影。50センチ四方ぐらいのスペースに沢山あった。グーグルグラスでも名前が分からないそうだ。何だろ?
上の謎の植物だけど、もしかしてこれかしら?これから成長すると黄色い花が咲く?
うーん、やっぱり違うかな。
八ヶ岳グレイスホテル所蔵の本「八ヶ岳・霧ヶ峰 植物手帳」より
八ヶ岳グレイスホテル
八ヶ岳グレイスホテル
八ヶ岳グレイスホテル
清里 萌木の村の近く
清里 萌木の村
清里 萌木の村
清里 萌木の村
清里 萌木の村
清里 萌木の村 キャロル
清里 萌木の村 メリーゴーラウンドカフェ
清里 萌木の村 滝が見える丘(中央やや右下、見えるかな?)
清里 萌木の村

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