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【年末特集】2023年に鑑賞したコンサートについて振り返りながらアーティストたちや作品を推す

今年のクラシック音楽、オペラ、シェイクスピア劇のライブ鑑賞数29公演となる見込み(これから旅先で鑑賞予定の7公演を含む)。

通りすがりの音楽好きの皆さん、あなたは2023年、いくつのライブ公演を鑑賞しましたか?

昨年よりさらに安定してライブイベントが開催されるようになり、コロナ禍の前の日常が戻ってきた。このように再び生音楽を楽しめる日々が来るとは!(感涙ポロポロ)

今年鑑賞したコンサート等のハイライトをお届けする。

(公演プログラムや演奏者名を含む詳細データは個人サイトに記載しています。)


待望の初鑑賞も!魅惑の歌姫たち

昨年末に連続でソプラノ歌手アスミック・グレゴリアン Asmik Grigorian の歌を聴く機会に恵まれたことに続き、今年も歌姫運が抜群に強かった!

まず、6月にウィーン国立歌劇場で再び アスミック・グレゴリアン。彼女がネッダを歌うレオンカヴァッロ作曲「パリアッチ」を鑑賞。相変わらずカッコイイ女性歌手。

同じくウィーンでもう1人の憧れ歌手を鑑賞。フランスの歌姫、ソプラノ歌手サビーヌ・ドゥヴィエル Sabine Devieilhe をご存知だろうか?

日本に閉じ込められたコロナ禍に泣きながら鑑賞したオペラや歌曲の動画でもよく歌っていた。お淑やかで落ち着いた大人の女性という雰囲気でありながら、歌声は力強くて印象的。それでいて、意外とキラキラ感のある子供っぽい可愛いキャラも歌える。

私の知る限り、サビーヌ さんはまだ来日していないのでは?

ヨーロッパ旅の素晴らしいところは、来日しない(あるいは滅多に来日しない)歌手の公演を聴けること。多くのクラシック音楽アーティストたちはヨーロッパをベースに活動しているので、僻地の日本よりヨーロッパの方が断然鑑賞チャンスがある。ウィーンで念願のサビーヌさん初生鑑賞!

プログラムの選曲にも惚れた。(←知らない曲が多いと嬉しいので・・・)とりわけ、若きアルバン・ベルクが作曲した歌曲が私にとっては凄い発見。

サビーヌさん がオペラ、フランス歌曲、それからご主人であるラファエル・ピション Raphaël Pichon が率いる古楽アンサンブルと共演の宗教曲で活躍しているのは知っていたが、歌曲の王道ドイツ歌曲でもこれほどのインパクトを与えるとは!サビーヌさんの歌をもっと聴きたい!どこかのホールに来日公演を企画していただけないだろうか?!

【鑑賞レポート】

ところでフランスにはもう一人、私が注目する歌姫がいる。メゾ・ソプラノ歌手のレア・デザンドレ Lea Desandre である。彼女もまたコロナ禍で泣きながら観た多くのクラシック音楽動画で輝いていた歌手だった。こうして、来日公演を聴ける日が来るなんて!今度は嬉しさで泣きそうだ!

いつも一緒のパートナー、リュート奏者トーマス・ダンフォード Thomas Dunford との王子ホール公演を9月に鑑賞した。"Lettera amorosa" 恋文と名付けられたイタリア歌曲のプログラム。二人が出会った7〜8年前に作ったプログラムだそう。モンテヴェルディの  dolce e'l tormento で始まるのだが、思いがけず突然アカペラで歌い始めた。ちなみに「いとも甘きこの苦しみ」(何という極めて感傷的なタイトル!)という意味なのだが、私は作品予習中にエンドレスにこの曲を聴きまくったのだった。シンプルながらハマる歌だ。上の動画の最初の曲なので、ぜひ聴いてみてくださいね。

何とサイン会がある!脱コロナ禍、バンザイ!久しぶりにCDを買った!(色々忙しくてまだ聴けていない。。)憧れのアーティストたちとお喋りするチャンスをゲットするためなら、今後もCDを買うぞ。

Thomas Dunford & Lea Desandre | 2023年9月 | 王子ホール | 撮影:筆者

9月にはもう1つビッグなイベントがあった。ローマ歌劇場の引越公演でプッチーニ作曲「トスカ」を鑑賞。題名役は世界的スターのソプラノ歌手ソニア・ヨンチェヴァ Sonya Yoncheva だ。カヴァラドッシを歌うテノール歌手ヴィットリオ・グリゴーロ Vittorio Grigolo も念願の初生鑑賞。

オペラ愛炸裂!ジークフリート、ヴェルディ3作品

前述のローマ歌劇場の「トスカ」だけでなく、今年は積極的にオペラを鑑賞した。自分のクラオタライフの方針として、知らない作品を知る機会を作っていくことにしている。今年もいくつかの初鑑賞作品があった。

6月のウィーン旅のメイン鑑賞はワーグナー「ニーベルンゲンの指環」第二夜「ジークフリート」だった。題名役を歌ったのはテノール歌手のクラウス・フロリアン・フォークト Klaus Florian Vogt。彼の歌は実は2回目。2013年にルツェルン音楽祭で演奏会形式の「ワルキューレ」でジークムント役を歌っていた。あれから10年以上経ったが、ジークフリートのような世の中のオペラ作品の中で最も体力を消耗する超ヘビーな役(上演時間4時間の作品、全幕で歌いまくり、4作品連続上演ならさらにヘビー)を歌える数少ない歌手であり続けていることに感動する!

【鑑賞レポート】

トンカチをカンカンして剣を鍛えながら叫ぶように歌うジークフリートのあの歌を歌いたい願望が私の中にある(笑)!

下の動画はフォークトさんではないのだが、同じくワーグナー作品の主役テノールで活躍する数少ない歌手の一人、アンドレアス・シャーガー Andreas Schager (私は未鑑賞)が歌うジークフリート。

この歌を歌いたくなる気持ちが伝わるだろうか?!ちょっと聴いてみてね。

ウィーンでの「ジークフリート」初鑑賞により、ワーグナーの主要作品のうち、未鑑賞は残り3作品となった。実は来年に3作品とも鑑賞予定なのだ!ついにワーグナー鑑賞コンプリート!絶対無理だと思っていたが、出来そうだ!

さて、今年はヴェルディ作品も大いに楽しんだ。3作品も初鑑賞した。

まず、3月に東京・春・音楽祭でリッカルド・ムーティ Riccardo Muti が指揮する「仮面舞踏会」。若手歌手たちが歌う演奏会形式だったのだが、初めて見るムーティ様は若い歌手たちの後ろに控えめに立つ謙虚さ。指揮する後ろ姿の品の良さにも惚れ惚れ。音楽祭の特別編成オーケストラだが、歯切れ良いテンポ感でどんどん前に進む。日本にいることを一瞬忘れそうになった。

7月にはチョン・ミョンフン Myung-Whun Chung 指揮の演奏会形式の「オテロ」を鑑賞。「オテロ」は、原作のシェイクスピア「オセロ」の方が断然面白いと思っていた。どうしてもセリフ中心の劇を、音楽が加わるオペラに変換すると、ストーリーの一部を省略せざるを得ないので、最初に劇を知ってしまうと物足りないのだ。しかし、今更ながらようやくヴェルディのオペラ版「オテロ」の魅力も存分に味わうことができた。音楽的には最高に素晴らしい!圧巻の演奏だった!(でもストーリーはやはり原作が好き!ヴェルディ版より酷いイアーゴ、そんなイアーゴを愛する妻エミーリア、幼すぎて痛々しいデズデーモナ・・・)

そして11月には「シモン・ボッカネグラ」を鑑賞。これもまた良かった!主要登場人物はヒロイン以外は男だらけ。すれ違いの友情。全てが上手くいきそうだったところで命尽きるシモンに最後は涙。

以上が今年鑑賞したヴェルディオペラ。ヴェルディ作品もだいぶ鑑賞マラソンが進んだが、まだ未鑑賞作品も多い。コンプリートを目指しているわけではないが、今後も積極的に鑑賞していく。


魔法使い?のようなピアニスト内田光子の生演奏を初鑑賞

ピアノ関連で強く印象に残っているのは、世界中で愛されているロンドン在住のピアニスト内田光子さん。11月にマーラー・チェンバーオーケストラと共に来日してモーツァルトピアノ協奏曲を弾き振り。

まるで魔法使いのような宇宙人のような(←一応褒め言葉です!)独特の雰囲気をこれでもかと振り撒きながら、それでいて信じられないほど美しい音色を最初から最後まで出し続ける。

【参考】ベルリンフィルでの演奏(内田光子)

以前からお名前も知っていたし、CDも聴いてきたし、コロナ禍では彼女が演奏するウィグモア・ホールの公演動画もよく観ていたので、すでに生演奏も聴いたことがあるような気がしていたのだが、今回が私にとっては初生鑑賞。やはり生演奏のインパクトは別物だと思った。

プログラムの後半、開始前にどこからともなく拍手が起こった。拍手はだんだん強くなる。誰か来ているな。少し前屈みになってチラッと一瞬見えたのは、なんと上皇様と美智子様!私は日本から逃げたいと思っている愛国心の無い人間(笑)なのだが、お二人の姿があまりにも上品で素敵だったので何だかとても良かった。お元気そうで何よりだ。

その他のピアノ関連の公演としては、私の中の三大ピアニスト(自己紹介記事ご参照)の1人であるエリック・ル・サージュ Éric Le Sageベルリンフィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター樫本大進さんと演奏したシューマン&ブラームスの濃厚なリサイタルを2月に鑑賞。

4月の東京・春・音楽祭では、キット・アームストロング Kit Armstrong が組んだ、ちょっとギョッとするほど凝ったプログラム5つのうちの2つを鑑賞。ルネサンス作曲家や初期バロックの作曲家の後にバッハ半音階的幻想曲とフーガが演奏された。このフーガ部分を私は今年、狂ったように練習しまくったのだった(無駄だったが)。

ヨハネ受難曲 - 私もエヴァンゲリスト役を歌いたい!(笑)

バッハヨハネ受難曲を鑑賞したのは11月。演奏はウィリアム・クリスティ William Christie 指揮の古楽アンサンブル・合唱団レザール・フロリサン Les Arts Florissants。アメリカ出身のクリスティがフランスに移り設立した。前述のメゾ・ソプラノ歌手レア・デザンドレ Lea Desandreリュート奏者のトーマス・ダンフォード Thomas Dunford もたまに参加している。

受難曲といえば、注目はやはり案内役とも言えるエヴァンゲリスト(福音史家)を歌う歌手。この歌手が激しく感情を込めて、説得力のある歌いっぷりを見せれば、お客さんは引き込まれる。カリスマ的な力でグイグイ引っ張って欲しいものだ。だいぶ若そうなテノール歌手(最近はわざわざ生まれた年など記載しないので実年齢はわからない。わざわざ検索して調べる気もない。)が歌っていたが、よく頑張っていた。良かった!

そういえば以前、音楽祭ラ・フォル・ジュルネのバッハの年に鑑賞したもう1つの受難曲「マタイ受難曲」でも若い歌手がエヴァンゲリストを歌っていて、受難曲が初鑑賞だったクラシック音楽初心者の私はエヴァンゲリストという独特のポジションに惹かれたのだった。今となってはそれは歌いたいという願望に(笑)

エヴァンゲリストという役を歌いたくなる衝動!
(スラスラとは歌えないのがもどかしい!)
別に女の私が歌ってもいいでしょ。テノール音域は割と得意だし(笑)

「マタイ受難曲」の強烈さに敵うものはない。最強の作品と思う。ストレートにショッキングな「マタイ受難曲」と比べると、同じ出来事を描いているのに「ヨハネ受難曲」は理解が難しいと感じた。リブレットを読みながら繰り返し聴くと徐々に飲み込めるようになったが予習に苦労した。予習も含め、生鑑賞の機会を得て一歩前に進んだ。(クラシック音楽鑑賞とは、こうして人生をかけて少しずつ作品と自分との関係を築いていくものである。)

ちなみに「ヨハネ受難曲」の予習に使用したのはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のデジタルコンサートホールに含まれるフルバージョンの動画(下の動画はその抜粋)。通常は演出のない演奏会形式で演奏されるのだが、ベルリンフィルでは指揮者サイモン・ラトル Simon Rattle 時代に両受難曲を興味深い演出付きで上演している。

ちょっと「マタイ受難曲」推しの意見を書いてしまったが、冒頭の合唱は「ヨハネ受難曲」もけっこう刺激的だと思う。ベルリンフィルでは、歌手たちが動き付きで歌うので、その刺激が増すのである。ちょっと聴いてみて!


少々脱線したが、ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンの話に戻ろう。

こちらもまたサイン会があるという!
張り切ってCDを購入して長い列に並んだ。ウィリアム・クリスティ様のサインをゲット!脱コロナ禍バンザイ!(再)(こちらも多忙ゆえまだCD鑑賞できておらず。ごめんなさい!)

William Christie | 2023年11月 | 東京オペラシティ コンサートホール | 撮影:著者


日本語版シェイクスピア鑑賞デビュー

本当は英語版のシェイクスピア劇を鑑賞したいのだが、残念ながら海外カンパニーの来日は見当たらない。僻地ニッポンだから仕方ない。

いや、だって、あの時代の英語の面白さ、英語のリズム、1つの言葉に二重の意味を込めた皮肉など、英語でないと面白みが半減してしまうのではと思うのだ。

しかし、コロナ禍で育んだシェイクスピア愛を進展させるため、日本語版シェイクスピア劇も鑑賞することにした。

3月に鑑賞したのは「ハムレット」だ。演出と現王クローディアスと前代王(ハムレットの父)役を野村萬斎さんが担当。ご子息の野村裕基さんが主役ハムレットを演じた。亡霊として登場するハムレット父だけが狂言スタイルという演出は不思議なほど違和感なく受け入れられる。息子さんをはじめとする若手たちも熱演。大いに楽しんだ。ハムレットという憂鬱なキャラは以前から好きだ(笑) きっとクラシック音楽ファンと親和性が高い(笑)

続いて10月に新国立劇場で上演された問題劇2本を一気に鑑賞。一応喜劇なのだが、「え?それでいいのか?!」という違和感のある作品を「問題劇」という。そんな、上演頻度も少ない珍しい作品を、2本も同時に制作するというマニアックな選択が素敵だ!

作品は「終わりよければすべてよし」All's Well That Ends Well「尺には尺を」Measure for Measure である。どちらも「ベッドトリック」という「ワザ」を使う。「ベッドトリック」をご存知だろうか?つまり、逢引きの約束をしたのに、暗い夜のベッドにいたのは別の人で、すり替えに気付かないまま・・・という(笑) (笑マークを入れたが、本人にとっては笑えないだろう!)

どちらも無理感のあるストーリーが逆に魅力なのかも。シェイクスピアらしいとも思う。(他の作品でもところどころ「え?」と思う場面はあるし。)

とはいえ、先に鑑賞した「終わりよければすべてよし」の方は舞台で鑑賞すると、テキスト(英語・日本語訳)で予習した時よりは納得できてしまったのに対し、「尺には尺を」は舞台でも最後まで「え?なんで?」なストーリーだと思った。

何しろ、これまで恋愛を連想させるような言動はなかったように思えるウィーン公爵ヴィンセンシオ(ウィーンっぽくない響きの名前だが気にしなくてよい)が、最後になぜか突然イザベラに求婚(笑)

突然差し出された手に戸惑うイザベラ役のソニンさん。何となく手を出そうか迷っている時にグイッと手を掴まれ、2人は客席に背を向けて少しずつ舞台を去っていくのだが、イザベラは何度も客席を振り返りながら
「え?なにこれ?」
「え?こういう展開?」
「え?なんで?」みたいな表情で去っていった。ハハハ!楽しかった。

私はクラシック音楽を聴くようになって、ほとんどテレビを見なくなって、テレビ自体を処分したが、大昔に見たテレビでソニンさんを覚えている。あの時の「ソニンちゃん」が舞台役者・ミュージカル歌手として大活躍している様子を嬉しく思う。

その他、出演者リストを見て気がついたのだが、岡本健一さんという役者とよく似た若い役者が、3月の野村萬斎さんの「ハムレット」に出ていたはず。名前も確か「岡本」だったような。

改めて調べ直してみたのだが、やはりお二人は父子だった。息子さんの方は岡本圭人さん。お二人とも(今年諸事情で話題になった)旧ジャニーズご出身というのが驚きだった。ジャニーズ系でシェイクスピア劇によく出ている方々がいらっしゃるとは!

ウィキペディアの情報だが、父健一さんは小学生だった圭人さんを単身イギリスに送って数年間留学させたとか。岡本健一さんは、ひょっとして筋金入りのシェイクスピア・ファンなのだろうか?!気になる!気になる!

日本のシェイクスピア役者に野村父子岡本父子という方々がいることを知った。

手前のクマは「尺には尺を」のイザベラ(修道女見習い)、
奥のクマは「終わりよければすべてよし」のヘレナ(巡礼者)
2023年10月 | 新国立劇場 | 撮影:筆者

舶来物好きの私はヨーロッパを拠点に活動するアーティストばかり気になるのだが、日本でシェイクスピア劇を熱心に上演している人たちに興味津々だ。いったい彼ら・彼女らはいつどこでどのようにしてシェイクスピアと出会い、夢中になったのだろうか?

2024年もシェイクスピア作品を鑑賞していこうと思う。



長い記事を読んでいただきありがとうございました!
あなたの2023年のコンサート鑑賞のハイライトは何ですか?
来年のコンサート鑑賞の抱負は?
2024年も沢山すてきな音楽と出会えますように!


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