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原始反射と感覚異常(感覚刺激の重要性)

今回は原始反射と感覚異常について、乳児期との関連性なども含めて書いていきたいと思います。
実は個人的にかなり興味のある分野でアメリカの大学院時代はテスト勉強の合間を縫ってこのあたりの論文を読んで朝方まで図書館にこもっていたものです。

原始反射とはなんでしょうか?

原始反射(Primitive reflex)とは、
個体発生初期、つまりまだ中枢神経系の高次機能が発現していない時期に一過性に出現する反射・反応のことを指します。
簡単にいうと、生まれてまもない赤ちゃんが無意識に行う動作のことです。
(口に指を近づけると咥えてくるようなかわいいやつのことです。
ちなみに、赤ちゃんが寝る前に少し笑うのも反射です…あなたのために笑っているのではありません笑)

一般的には原始反射は一度なくなれば再び出ることはないとされていますが、脳に異常があればもう一度出てしまう可能性もあります。
原始反射は高次機能の発達によって抑制されているため、
その抑制がなくなればまた出てきてしまうということです。
また、高次機能の発達不良によって原始反射が残ってしまうこともあります。

生まれてまもない赤ちゃんの脳は大脳皮質(高次)が発達しておらずに、
より原始的な部分である脳幹などの影響を受けやすい状態になっています。
この脳幹などの影響で起こる本能的な動作が原始反射というものです。
しかし、様々な刺激による大脳皮質の発達にしたがって脳幹が抑制されていき、脳幹などの反射が抑制されていくということです。

羽生裕子「脳の発達と障害児の行動」発達プログラム113号 コロロ発達療育センター 2009年

超簡単に説明すると原始反射とは、
成長するにしたがって無くなっていく反射のことです。

では、もし何らかの原因でこれらの反射がうまく抑制できなければどのような問題が出てきてしまうのでしょうか?
原始反射全てを説明するとものすごい量(30個以上)になってしまうので、今回は脳幹レベルの反射である4つの反射を軸に考えていきたいと思います。

非対称性緊張性頸反射 (Asymmetrical tonic neck reflex(ATNR))

この反射は、
“乳児の顔を片方に回旋させると顔側の四肢は伸展し、頭部側の四肢は屈曲すること”
を指します。

通常では3-9ヶ月で無くなる反射とされています。

これATNR残ってしまうことで
1. 眼球での追従が困難 (パスートができない)
2. 正中線をこえる動きが苦手

3. 文字を読むことが困難
4. 左右の混乱
5. 姿勢不良

などの問題が出る可能性があります。

対称性緊張性頸反射 (Symmetric tonic neck reflex (STNR))

この反射は、
“伏臥位で頭部を伸展させると、上肢は伸展、下肢は屈曲します。逆に頭部を屈曲させると上肢は屈曲、下肢は伸展する”
を指します。

この反射は通常では生後6-9ヶ月で発現し、9-11ヶ月で消失するとされています。

STNRが残存してしまうことで、
1. 姿勢不良
2. ハンドアイコーディネーション不良
3. 集中できない

4. 授業に集中できない
5. ボール遊びが苦手
6. 協調が苦手
7. 泳ぐのが苦手

などの問題が出る可能性があります。

緊張性迷路反射(Tonic labyrinthine reflex(TLR))

この反射は、
“背臥位では伸展緊張が促通され、伏臥位では屈曲緊張が促通されること”
を指します。

この反射は通常では生後2-4ヶ月で消失するとされています。

TLRが残存してしまうことで、
1. バランス不良
2. 協調性不良
3. 感情のコントロールができない

4. 両眼視障害
5. ケアレスミスが多い

が起きてしまう可能性があります。

モロー反射(Moro Reflex)

この反射は、
”背臥位の子供の頭を少し持ち上げて、頭を落下させると両上肢が伸展・外転し、その後に内転が起こること”
を指します。
また、強い光や音などの刺激によっても反応し、
強い刺激を受けると四肢が伸展し、その後に屈曲するような反射のことを指します。

この反射は通常では生後5-6ヶ月で消失するとされています。

モロー反射が残存してしまうことで、
1. 感覚異常
2. 過覚醒
3. ストレス過多

4. 学習障害
5. 免疫不全
6. 不安症
7. 視覚障害

などが起きてしまう可能性があります。

原始反射はなぜ残るのか?

原始反射が残ってしまうことを”原始反射の残存”と呼びます。
最初にも書きましたが、原始反射は高次の脳(主に大脳皮質)の成長にしたがって抑制されていきます。しかし、この大脳皮質の成長が何らかの原因で阻害されてしまうことによって原始反射が残ってしまいます。
この原因として考えられていることとして、
1. 妊娠中の母親のストレス
2. 怪我・病気・慢性的なストレス
3. 子宮内での動作不足
4. 乳児期の動作・刺激不足 (ハイハイの不足や長時間同じ姿勢をとるなど)
5. 他の発育不良

6. 栄養の問題(妊娠中・乳児期)

これらのことを考えると
大脳皮質に様々な刺激を与えることが非常に大切なことであると考えられます。
(体性感覚・視覚・前庭覚などを効果的に刺激してあげる必要がある)

しかし、これらに明確なエビデンスは見つかりませんでした。

Dr. Robert Melliloの著書”薬に頼らず家庭で治せる発達障害とのつき合い方”では、原始反射を乳幼児期に使わなかったため残存してしまうと考えられています。
逆に言うと、その反射を使うことによってこの反射を抑制していくことができるということです。
個人的には体性感覚・視覚・前庭覚の刺激量を増やしてあげて大脳皮質を活性化してあげることによって原始反射が抑制されていくのではと考えています。

原始反射の改善方法はあるのか?

https://www.drrobertmelillo.comより引用

原始反射の改善方法や文献の紹介は個人ブログの記事で解説しています。
各反射も動画付きで解説していますので、もっと詳しく知りたい方はご覧ください。
全ての記事が無料で見れますので、読んでくだされば幸いです。

参考文献

Gieysztor EZ, Choińska AM, Paprocka-Borowicz M. Persistence of primitive reflexes and associated motor problems in healthy preschool children. Arch Med Sci. 2018;14(1):167-173. doi:10.5114/aoms.2016.60503

Melillo R, Leisman G, Mualem R, Ornai A, Carmeli E. Persistent Childhood Primitive Reflex Reduction Effects on Cognitive, Sensorimotor, and Academic Performance in ADHD. Front Public Health. 2020 Nov 17;8:431835. doi: 10.3389/fpubh.2020.431835. PMID: 33282806; PMCID: PMC7706103.


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